<フィギュアスケート:全日本選手権>◇23日◇さいたまスーパーアリーナ

 浅田真央(23=中京大)が3連覇を逃した。SP1位で迎えたフリーで、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に2度挑んでともに失敗し、合計199・50点。215・18点で初優勝した鈴木明子(28)と2位の村上佳菜子(19)に逆転されて、まさかの3位に沈んだ。全日本での3位以下は03年の8位以来10年ぶり。来年2月のソチ五輪に向けて「10発跳んで10発入るぐらい」に代名詞のトリプルアクセルに磨きをかける。日本スケート連盟は浅田らソチ五輪代表10人を発表した。

 浅田の試みはまたしても実らなかった。冒頭の3回転半ジャンプで両足着氷して回転不足。続けて3回転半+2回転トーループにトライしたが、踏み切りが合わずに単発の1回転半に終わった。2つのジャンプで3・88点。大きな得点源で失敗した。その後もジャンプでミスが出た。

 「公式練習から自分がいいというアクセルがなくて。『あ、どこにいっちゃったんだろう』という感じ」と悔しさを押し殺した。午前の公式練習では10回前後跳んで成功1回だけ。演技直前の6分間練習では2回とも失敗した。「アクセルは2回なので、大きなパーセントを占めている。得点(自己採点)は半分以下かな」と言った。

 ベストな状態でなくても挑んだ。GPファイナルからの試合間隔は2週間。腰に痛みがあり、通常メニューをこなせなかった。佐藤コーチは「ビールマン(スピン)、レイバック(スピン)は十分にやっていません。本人はいいと言うが。それが他のところでいろんな形でしわ寄せが来た」と口にした。

 フリーだけの10月のジャパンオープンを含めて、5戦で計11本を跳んで成功はなし。それでもトリプルアクセルの追求は続ける。「戦略はないです。自分がやっているプログラムを成功させるだけ。チャレンジではなくてこれが基礎」とプログラム変更を否定。その上で「どうして跳べなかったか、わからない。(計3本跳んだ)バンクーバー五輪のように練習で10発跳んで10発ぐらいじゃないと試合で跳べない」と言った。

 海外を含めて現役選手で3回転半の使い手は浅田だけ。先駆者の92年アルベールビル五輪銀メダルの伊藤みどりさんは、浅田も指導を受けた山田満知子コーチに「10発跳んで12発決める」と言われたという。試合での成功率は必ず落ちる。浅田は「成功するには毎日練習して確率を上げること」と分かっている。

 昨年9月からバレエを習い始めた。国際的トップダンサーのワジム・ソロマハ氏から「手と目を体と一緒の向きにつけなさい」と指導を受け、あごの角度までこだわるような鍛錬を積み、感情を表す顔の動きまで研究した。その成果はトリプルアクセルの成功があってこそ出る。「この悔しさを忘れないで五輪にぶつけたい。バンクーバーは自分のミスで銀メダルになった。日本に一番いい色のメダルを持って帰りたいこともあるが、目指している最高の演技を見せられるように頑張りたい」。フリーとSPで計3回のトリプルアクセルを成功させて、金メダルをつかんでみせる。【益田一弘】