女子100メートルバタフライは病気を克服した星奈津美(24)が3連覇した。

 「この舞台に立てるなんて、半年前には思わなかった…」。そう言って、星は言葉を詰まらせた。前半の50メートルは3位。後半は強さを発揮し、先行する2人をかわした。58秒62で派遣標準記録は突破できず「タイムは悔しい」。それでも「優勝はうれしい」と話した。

 持病のバセドー病を完治させるため、甲状腺の全摘出手術をしたのは「本気でリオを狙うため」だった。これまでは投薬だったが、昨年10月のアジア大会後は疲れもひどくなった。競技に集中するため、11月21日に手術を受けた。

 1カ月休んで練習復帰したが、最初は傷口が気になって首を上下動させるバタフライができなかった。それでも、昨秋から指導を受ける平井コーチにも後押しされて、徐々に調子は戻った。今年2月の米高地合宿では「世界選手権を意識できるようになった」。

 ロンドン五輪200メートルで銅メダルを獲得後「メダリストのプレッシャーもあって」苦しんだ。「何のために水泳を続けているのか」と自問自答した。だからこそ平井コーチに師事し、手術も受けた。「今は純粋に泳ぎたい気持ちが強い。気持ちの部分ですっきりしている」。輝きを取り戻した星は、得意の200メートル(11日決勝)で世界選手権出場を目指す。【荻島弘一】