ラグビーのW杯イングランド大会の開幕(9月18日)まで、10日で残り100日となった。日本代表は11年ニュージーランド大会の惨敗(1分け3敗)から、世界ランクを最高9位まで上げる成長を遂げた。現在は13位だが、8強入りを目標に宮崎市で合宿を張る。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(55)が掲げる「JAPAN WAY」が、いよいよ最終章に入った。

 12年4月、ジョーンズHCは「W杯でベスト8に連れていく」と宣言した。日本代表はW杯で24年間も勝利がない。しかし、チームは約3年間で生まれ変わった。ジョーンズHCが求める日本らしさ。目指すところは超攻撃的ラグビーだ。

 ラグビーの戦い方は大きく分けて2つ。1つはキックでボールを敵陣内深くに入れる方法。相手にボールは渡るが、自陣ゴールからボールを遠ざけることで失点のリスクを減らし、相手陣内で守ってミスを誘う。これに対し、ジョーンズHCが教えたのは、あくまで自分たちでボールを持ち続けるスタイル。攻撃の主導権を握り、パスで相手の守備に隙を作って前に出る。

 ラグビーではボールを前に落としただけで反則となり、相手ボールになる。自陣でミスが起きれば、その瞬間にピンチを迎えてしまう。ジョーンズHCは「大きな勇気が求められる」と言う。それでも日本選手の長所を理解するからこそ、このスタイルを貫く。「日本人はどの国よりハードワークできる。走れるからこそできるスタイルだ」。昨年テストマッチで強豪イタリアを破るなど10連勝したことが、その証し。体格差を覆すための準備は、なお順調に進んでいる。

 最初に戦う南アフリカは世界ランク2位。ジョーンズHCは、残りの3戦のことは考えず、まずは初戦に全力を尽くす。「たとえ世界一の相手でも勝つ方法はある。あとは選手たちが自分のプレーを遂行できるかだ。あと100日で、そこを伝えていく」。そう断言した名将に、迷いはない。【岡崎悠利】

 ◆エディー・ジョーンズ 1960年1月30日生まれ。オーストラリア・タスマニア州出身。オーストラリア代表監督で03年W杯準優勝。07年に南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーとしてW杯優勝。10年にサントリー監督に就任し、11年度にリーグと日本選手権の2冠。