2大会ぶり6度目の優勝を目指すAシード東福岡が、28-22で京都成章に辛勝し4大会連続で4強入りした。一時は12点差を追う展開だったが、相手にスキが見え始めた後半14分からの反撃を皮切りに、高校日本代表候補10人を擁す底力で3連続トライなどで逆転した。準決勝は同じくAシードで今季初対決の御所実(奈良)戦。苦しみながら勝利した教訓を次戦の糧にする。

 優勝候補筆頭の目の色が変わった。高校日本代表候補のNO8福井は「このままじゃ終われなかった」。12点差を追う後半14分から猛攻に転じた。敵陣10メートルから同候補のSO丸山が個人技で抜け出すなど懸命につなぎ、同候補のWTB山下の右中間トライで反撃ののろしだ。

 同19分には、敵陣30メートルの左中間ラックから左につなぎ、WTB焼山が同点トライを決めた。「覚えていない」と言うほど必死にゴールへ飛び込んだ。同21分には、福井が「勝ちしか考えていなかった」と、ハーフウエーラインから複数のタックルを突破しそのまま中央にトライ。運動量の落ちた相手のスキを突き襲いかかった。

 鋭いタックルで応戦され、パスミスを連発するなどリズムに乗れなかった。前半終了間際には7-7の同点に追いつかれた。それでも、その直後の円陣で高校日本代表候補のロック箸本主将は「こっから、こっから」と鼓舞した。藤田雄一郎監督(44)も「ハーフタイムに彼らの顔を見たらやれそうだった。浮き足だったところはなかった」という。

 だが後半早々から2トライを許す展開に「リードされたのは今季初めて」と箸本主将。絶体絶命の危機に追い込まれた。今季は昨年4月開幕のワールドユース決勝で唯一、南アフリカ代表に敗れただけ。新チーム結成以来、国内の高校生相手の公式戦は、負けはもちろん、リードさえ許してこなかった。

 逆転は練習のたまものだ。全国でも通用する実力を持つ2軍選手を相手に、残り10分で15点差をひっくり返すゲーム形式の練習を繰り返してきた。箸本は「なんでこんな練習をするのかなと思ったけど、試合で生きた」。勝利を信じ「ここで成果を出さないと意味がないぞ」と尻をたたいた。

 準決勝は御所実と対戦するが、藤田監督は「今日はいい経験になった。次でその真価が問われる」。この日の28得点で大会通算得点は258点に伸びた。14年度大会で優勝した同校が記録した通算298点の記録更新もかかる。この日の教訓を生かし春の選抜大会、7人制大会に続く今季高校3冠へ進む。【菊川光一】