今大会、金メダルありませんでしたが、日本代表は銀4、銅3の計7個のメダルを獲得しました。

 そんな中、日本の自由形の強化が実になっていると感じた大会でした。女子800メートルリレーは五十嵐千尋選手、池江璃花子選手、青木智美選手、高野綾選手の4人で臨み、7分50秒43の日本新記録で5位に入りました。池江選手を筆頭に選手は粒ぞろいで、全員が200メートルを1分57~58秒台で泳ぐ力を持っています。

 もともと日本は世界に比べ、自由形の技術が高くありませんでした。そこで2009年から強化に取り組み、平井伯昌コーチのもと「自由形合宿」が始まりました。お家芸と言われる平泳ぎについては、平泳ぎの泳ぎ方を分かっているけど、自由形は分からない。そこでどう泳げば速くなるか? 科学班も含め試行錯誤を繰り返してきました。強い選手と競わせることで相乗効果を狙った結果、今や日本選手権の決勝に残る8人は誰が選ばれても遜色がありません。

 自由形の成果は男子も同じです。塩浦慎理選手、中村克選手を中心とした400メートルリレーでは3分13秒65の日本新記録をマーク。また、大会最終種目の400メートルメドレーリレーにも好影響を及ぼし、日本は3分30秒19の日本新記録です。表彰台は惜しくも逃しましたが、日本の取り組みは随所に出ていると思います。

 一方で世界のレベルが上がっていることを実感できた大会だったと思います。男子400メートル個人メドレーでは、日本勢の金メダルが期待されましたが瀬戸大也選手の銅が最高で、萩野公介選手は6位でした。優勝したケイリシュ選手(米国)は4分5秒90の大会新記録。あらためてトップに居続ける大変さを実感したのではないでしょうか。

 金メダルのない大会でしたが、世界の現状を知れたことは最大の収穫。3年後の東京五輪へ、いいスタートが切れたと思います。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173ンチ。