世界45位の大坂なおみ(19=日清食品)が、前年覇者で同6位のアンゲリク・ケルバー(ドイツ)に6-3、6-1で快勝した。日本女子が4大大会で前年覇者に勝ったのは、73年全豪準々決勝で沢松和子が72年優勝のウエード(英国)に勝って以来2人目。68年のオープン化以降、日本女子が全米のセンターコートのシングルスで勝ったのは初めてだ。

 世界最大の舞台は、1年で悪夢から歓喜の場に変わった。初のトップ10撃破となった大坂は小さなガッツポーズ。「ラケット投げるかな、叫ぶかなって考えてたけど、こんな感じになっちゃった」と苦笑いした。

 昨年の9位キーズ(米国)との全米3回戦。同じセンターコートで悪夢を見た。最終セットで5-1とリード。初の4大大会16強入りは目前だったが、「勝ちを意識したら、パニックになった」。大逆転を許してコート上で涙を流した。この日、第2セットで4-1となった時に「同じ緊張感に襲われた」。しかし、昨年の経験が生きた。「落ち着いて、今までのプレーをしようと言い聞かせた」。最後まで冷静で、集中力は途切れなかった。

 女子日本代表チームも金星をバックアップした。左利きの古庄コーチが練習相手となり、昨年の全豪、全米の覇者の対策を練った。土橋監督は「チームで何度もミーティングを重ね、方向性を決めた」。凡ミスは安定感に定評のあるケルバーを下回る17本。ノータッチの決定打はケルバーの倍以上の22本。1度もサービスゲームを失わず、試合時間65分の快勝だった。

 時速200キロを超えるサーブが武器だった。しかし、上半身だけで打つため、腹筋を痛めることがあった。日本協会が招いたオーストラリア人コーチのテーラー氏は足のバネを使うフォームに改造。スピードはやや落ちたが安定感が加わった。「もう200キロサーブは必要ないわ」。課題だった安定感を手に入れ、日本女子の最強選手に生まれ変わる。【吉松忠弘】

 ◆テニスの全米オープン女子シングルスの前年覇者の初戦敗退 ケルバーの1回戦負けは、04年優勝のクズネツォワ(ロシア)が05年に1回戦で敗退して以来で史上2度目。男子では、98年優勝のラフター(オーストラリア)が99年に1回戦負けした1度だけ。

 ◆WOWOW放送予定 31日午前7時55分から。9月1日午前0時から。ともにWOWOWライブ。生中継。男女シングルス2回戦ほか。