立命大が3勝3敗で並んでいた関学大との一戦をSO藤高将(2年)の“サヨナラPG”で制し、3位確定で2季ぶりの全国大学選手権出場を決めた。

 19-19で後半ロスタイムに入り、迎えた43分。引き分けで終われば、リーグ規定で上位3校の同選手権出場を関学大に譲る窮地で、藤高がゴールまで約35メートルの右中間PGを決めた。直後にノーサイドの笛を聞くと「自信はあった。落ち着いて蹴れた」とうれし涙を流した。

 自らの性格を問われ「一言で言うと…わがまま」といたずらっぽく笑う20歳の大仕事だった。大阪桐蔭高では3年時に花園ベスト8。強豪東福岡に8-15で惜敗した一戦も10番を背負った。昨春の立命大進学後も1年からリーグ戦に出場。ところが今夏の夏合宿前にはDチーム(4軍)にまで落ちる経験をした。

 理由は「日頃の行いです」と苦笑いで明かす。早朝のウエートトレーニングの寝坊など、チームの規律を乱す行動が原因だった。夏合宿前に中林正一監督ととことん話をし、再びAチーム(1軍)に戻ってきた。“サヨナラPG”の前には、失点につながるミスも犯した。息詰まる空気感の中、PGを決めると「FWが頑張ってくれていた。決めるのが僕の仕事」と照れくさそうな笑顔。スタンドの階段を下りながら、恐る恐るキックの瞬間を見つめたという指揮官も「いいかげんなヤツ。8割方入らないと思った」と辛口になりながらも「失いかけた信頼が戻りました」と笑った。

 試合後のロッカールーム前。チームメートに「ほとんど泣いているのを見たことがない」と言われる藤高は涙の理由を明かした。「キックを決めてスタンドを見たら、おやじ(清次さん)だけが立ち上がっていて…」。5歳でラグビーを始めてから、支えてくれた父に「選手権に連れて行く」と約束をしていた。紆余(うよ)曲折がありながらも、有言実行した男は泣いた。

 全国大学選手権での初戦は12月16日、大阪・金鳥スタジアムで関東大学対抗戦の3位校とぶつかる。藤高は「格上ですけれど、チャレンジするだけ」と言い切り、中林監督は「選手権はどのチームも格上だけれど、勝ちに行く。関学の分も責任がある」と気を引き締めた。雨の長居で、立命大の結束は強まった。【松本航】