昨年8月に右手首の腱(けん)を脱臼した元世界4位の錦織圭(28=日清食品)が、復帰後2戦目で初勝利を挙げた。同214位のノビコフ(米国)に6-3、6-3のストレート勝ち。先週の復帰初戦で敗れたノビコフに雪辱するとともに、17年8月4日のシティオープン準々決勝以来、178日ぶりの白星となった。2回戦では同162位のバヒンガー(ドイツ)-同304位のカロフスキー(ロシア)の勝者と対戦する。

 前週とは見違えるような出来だった。試合展開に結びつける錦織の意識は高く、持ち味のリターンもさえた。「前より、ぐっと試合に入り込めた」。ほろ苦い復帰戦の相手に1週間でリベンジ。底力の違いは明白だった。

 時速210キロを超えるサーブで、15本のエースを奪われた前回対戦とは違い「サーブリターンがすごく良かった。そこから得意のラリー戦に持ち込めた」。前週、相手の第1サーブが入った時の得点率は73%。それをこの日は57%に押さえ込むことに成功。復帰1週間で感覚も徐々に戻ってきた。

 長期離脱で感覚が鈍るのが、ショットの中で最も速度のあるサーブへのリターンだ。この日はラケットの振りを小さくし、相手のサーブの速度を利用して返球するブロックリターンを多用。そこから得意のストロークで振り回した。そのブロックリターンで効果を発揮したのが、復帰戦から使用している“ゆるゆる”ストリングスだ。負傷前より10ポンド以上も緩い強度で張ったストリングスは、球が飛ぶ。復帰戦はその飛びになれず安定性を欠いたが、この試合ではそれを利用し、ラケットを振らずともブロックで返球。「ゆるゆる作戦」は大成功だった。

 2月12日にはニューヨークでツアー復帰戦が始まる。その前に下部大会とはいえ、少しでも勝ち星は重ねておきたい。「バックが振れて、フォアもまだ課題はあるけど、しっかり打てているときもあった」。いよいよ本領を発揮する時が来た。