「センバツ」は野球だけじゃない! 明日30日開幕の第19回全国選抜高校ラグビー大会(埼玉・熊谷ラグビー場)に、仙台工(宮城)が「実行委員会推薦枠」で初出場する。15年には部員が7人まで激減した、公式戦出場の危機からの復活。全国の強豪との貴重な対戦で経験を積み、さらなる飛躍を遂げるつもりだ。東北勢は秋田工、仙台育英(宮城)、黒沢尻工(岩手)も出場する。(学年は新学年)

 吉報に祝宴が沸いた。3日の「3年生を送る会」中に、阿部宏喜監督(45)の携帯電話が鳴った。センバツ高校野球の21世紀枠に相当する「実行委員会推薦枠」での選抜ラグビー大会への出場決定の報が届く。部員、スタッフ、卒業間近の3年生、家族、後援会、OBなど全員で喜びを分かち合った。

 15年には部員7人の危機的状況に陥った。少子化と工業高校離れ。プロ野球楽天やJリーグ仙台など、プロ球団の定着によりラグビー離れの影響もあった。石巻高時代に花園出場経験のある阿部監督が仙台市周辺を駆け回った。経験の有無を問わず素質あふれる中学生探しに、OBや後援会も協力。同年のラグビーW杯(英国)で日本代表が南アフリカ相手に大金星を挙げたことも大きかった。そのピッチには仙台工OBのロック真壁伸弥(30=サントリー)の姿も。同監督は「真壁がうちのラグビー部にいたんですよと説得力もあった。支えてくれた皆様と一緒に喜んでいただけたのは良かった。貴重な経験にチャレンジして、全国の強豪を全力で倒しにいってほしい。それが次につながる」。地域との関わりや、昨年11月の新人大会で仙台育英に5-56と敗れたが、序盤の健闘も評価された。

 中学時代のラグビー経験者は主将のフッカー斎藤蓮主将と2年生CTB秋庭駿瑛だけ。斎藤は「真壁さんはW杯の時にもしっかり指示を出して南アフリカ戦の勝利のトライにつなげた。あの姿が自分の理想」。1次リーグで流通経大柏(千葉)、長崎北陽台、関大北陽(大阪)と対戦することも決まった。「普段対戦できない強豪ばかりなのでワクワクしています。一生に1回あるかないかの機会。全力で胸を借りて成長したい」と笑顔で闘志を燃やした。

 今年1月、「チームで大事にするもの4カ条」を掲げた。(1)気持ち(2)覚悟(3)準備(4)規律。「どんな強豪にも気持ちで向かっていくこと。何に対しても全力で取り組むこと。試合までの準備期間が試合よりも大切。普通のことかもしれませんが、遅刻しないとかゴミを拾うとか。その意識で生活をしたら、みんなに自信も芽生えてきています」。ラグビーだけでなく、斎藤自身も苦手だった漢字テストの成績も、上位に食い込むほどに急成長した。

 いよいよ明日30日に開幕する。斎藤は「点差は開くかもしれないが、自分たちは最後まで絶対に諦めない。それが花園予選につながる。育英にもっと食い下がって、花園出場も諦めません」。部員26人で、スタッフや支えてくれた人の思いも背負って、仙台工魂を披露するつもりだ。【鎌田直秀】