帝京長岡が延長にもつれ込む死闘を制し、5年連続の8強入りを決めた。八王子学園八王子(東京)とのゲームはタイムアップ寸前に追いつかれて72-72になったが、オーバータイムの5分間で85-77と、突き放した。両足をつりながらコートを激走したPG神田龍一(3年)が22得点、13リバウンドのダブル・ダブルで大暴れした。

スタミナを使い果たしても、PG神田龍はコートで走るスピードを落とさなかった。肉体が悲鳴を上げながらも、リング目がけてリバウンドに跳んだ。第3クオーター(Q)の後半には両足のふくらはぎ、両太ももの裏をつっていた。試合中にも痛む部分を押さえ、顔をゆがめた。ところが、ボールを持てば痛みを度外視。72-75で迎えた延長2分には連続2ゴールでチームに勢いを引き寄せた。「ガードの自分が点を取らなければ、と思いながらプレーした」。

柴田勲監督(49)は神田龍を、こう絶賛した。「満身創痍(そうい)ながら、リーダーシップを発揮してくれた。頭が下がる」。指揮官は、コートで足の痛みをこらえる神田龍を自分からベンチに下げる気持ちはなかった。「ボクが交代させたら『何で代えたんだ』と後で怒られる。彼が言ってくるまで、交代させなかった」。ベンチに退いたのは、延長も残り18秒の時だった。それまでは「止まったときより、動いていた方が痛みを感じない」とPGはゲームに集中していた。

試合に入る前は、同県のライバル・開志国際が敗れるシーンを見ていた。「県内で切磋琢磨(せっさたくま)してきた開志(国際)の分も背負った」と神田龍は言う。その開志国際には夏の県総体決勝で敗れ、全国高校総体(インターハイ)は不出場。夏の悔しさも冬のパワーに変えていた。帝京長岡はこれで14年の初出場から5年連続で8強以上。例年の成績にたどり着いたが、神田龍は満足しない。「昨年は3位で先輩たちに、いい思いをさせてもらった」と今年は、自分の力で「いい思い」をする決意だった。【涌井幹雄】