押しも押されもしない絶対的エースとして“春高”の舞台に戻ってきた。洛南(京都)大塚達宣(3年)。昨年の決勝で鎮西(熊本)に敗れてから1年。清風(大阪)戦では両チーム最多の25点をたたき出して14年ぶり2度目の優勝、初戦の2回戦から全5試合ストレート勝利の原動力になり、大会最優秀選手賞(MVP)も獲得した。

「去年はエース対決と言われて、僕が打ち負けました。インターハイでも僕が最後の1点を決められなかった。その悔しさをバネに、チームを勝たせることができる選手になろうとやってきました」

2年生エースとして挑んだ昨年の大会で鎮西の鍬田憲伸(現中大)に力の差を見せつけられてストレートで敗れ去った。夏の高校総体決勝でも市尼崎(兵庫)にフルセットの末、苦杯を喫した。細田哲也監督(50)は言う。「彼は失敗を恐れるタイプ。試合中、苦しくなると(スパイクを)入れに行くところがあるんです」。勝負どころで打ち切れない。そんな大塚が国体の戦いの中で目を覚ました。

洛南のメンバーに他校から1人の選手が加わった京都選抜で練習、試合を重ねるうちに気づいたことがある。「僕がスパイクを決めると、その1人の彼が喜んでくれる。逆に彼が決めれば僕たちもうれしい。勝ちを意識しすぎて重圧を感じるより、楽しんでバレーをすればいいんだと分かったんです」。国体を制したことで、大塚は重圧から解放された。苦しい場面でもトスを要求し、フルパワーでボールをたたけるようになった。決勝の第3セット終盤、清風に追い上げられながらレフト、バックから強打を連発して得点を重ねた姿は進化の証しだった。

身長193センチで最高到達点は338センチ。日本代表級の高さを持つオールラウンドプレーヤーは卒業後、早大に進学する。「まだ僕は線が細いし、パワーも足りませんから」と謙遜するが、「将来は日の丸を背負って戦いたい」という夢も抱く。高校生活最後の大会で輝きを増したアタッカーは、新たな環境でステップアップを目指していく。【小堀泰男】

◆大塚達宣(おおつか・たつのり)2000年(平12)11月5日、大阪府枚方市生まれ。両親の影響で小3からバレーボールを始め、枚方市立中宮中卒業までパナソニック・パンサーズ・ジュニアでプレー。中3時に大坂北選抜として全国都道府県対抗中学大会に出場し、MVPに当たるJOC・JVA杯を受賞。洛南ではスポーツコースではなく一般コースに在籍。17年に16歳でU19日本代表に選出され、世界ユース3位に貢献した。193センチ、80キロ。ウイングスパイカー。