【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】世界9位で、前哨戦優勝の錦織圭(29=日清食品)が、相手のけいれんに助けられた。予選勝者で同176位のマイクシャク(ポーランド)相手に3-6、6-7の2セットダウン。苦境に立たされたが、第3セットの序盤で、相手がけいれんし始め、3-6、6-7、6-0、6-2、3-0となったところで、途中棄権した。ダニエル太郎(25)も相手棄権で初戦を突破した。

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本当に危なかった。相手の一世一代、神がかったプレーに、2セットダウンまで追い込まれた。錦織が好ショットを放っても、それが“倍返し”で戻ってきた。さすがの錦織も「かなりびっくりした。もし元気だったら、危なかったかもしれない。トップ50、30に行ってもおかしくないテニスだった」と驚きを隠せなかった。

直線的でリスキーだが、最もスピードが出る打球が、錦織のコートに突き刺さった。先に3度のブレークポイントを握ったが奪えず、逆に1度のチャンスを一発の怖さで奪われ、後手に回った。「自分のプレーが、彼のプレー(のリズムに)合っていた」。絶体絶命のピンチだった。

しかし、第3セットの第3ゲームだった。相手が、右手で何度もグリップを握り直し、ひざも曲がらなくなった。けいれんが、体全体に起こり始めていた。一気に、錦織が「絶対にポイントをあげないように意識した」と攻め立てた。完全に流れは逆転した。

相手は、当たりそこねの球が、絶妙な場所に弾むなど、運も味方につけた。「100点ではなかったが、70~80点はできていた」と、錦織自身もプレーに一定の手応えを感じながらも、追い込まれた。この日は錦織の日ではなかった。

しかし、どんな形でも勝ち進むことが大事。次戦は、歴代最多1万3000本以上のサービスエースを放つカロビッチが相手だ。「好きじゃないが、自分のリターンやサービスゲームをしっかりプレーしたい」。この勝利を必ず次につなげる。