昨季ボルダリングW杯で総合優勝を果たし、東京オリンピック(五輪)でもメダル候補が期待される野中生萌(みほう、21=XFLAG)が、今季の開幕戦で初の日本一となった。テニスの全豪オープンで優勝した同世代の大坂なおみの戦いぶりも刺激とし、決勝全4課題のうち3完登。12度目の優勝を目指した野口啓代(TEAM au)、17年覇者の伊藤ふたば(同)との女子3強の争いを制した。

世界で戦ってきた野中が、ようやく日本でも強さを見せつけた。「ずっと日本で優勝できなくて悔しい思いをしてきた。ついに優勝できて今本当にうれしいです」。4課題目のトップホールド(突起物)をつかんで優勝を確信。はじけるような笑顔をみせた。

暫定1位で迎えた最終4課題目。「少ないトライで登れば勝てる」と自分を奮い立たせた。思い浮かべたのは同じ21歳、97年生まれの大坂なおみが勝った全豪決勝だった。生中継をテレビで観戦。流れが悪い場面でも立て直し、感情をコントロールする姿と重ねた。「自分も感情が出やすいタイプ。そういう場面で戦い抜くコントロールが大事」。気持ちを落ち着かせ、3課題目で登れなかった悪い流れを断ち切った。「大坂さんを見習って実践できたかなと思います」と話した。

今季、さらなる進化も模索する。昨年9月の世界選手権、10日間にわたる長期日程に体は悲鳴を上げ「このままじゃ勝てない」。宮沢克明コーチ(33)に本格的に指導を仰いだ。「大会が長くてつらい」と嘆く野中を宮沢コーチは「選手としてありえない」と一蹴。週2回ほどのクライミング練習を週4回に増やし、まずは練習量をこなすことから始めた。今季初戦を優勝で飾り「メンタルにも余裕ができて、量をやった自信もついた」と成長も実感。次の目標となる2月のスピード・ジャパンカップに向け、「良いスタートができた」と笑顔で締めくくった。【戸田月菜】