08年北京、16年リオデジャネイロオリンピック柔道女子52キロ級銅メダルの中村美里(29=三井住友海上)が30日、都内で行われた筑波大大学院の学位記授与式に出席した。

桜の花をあしらった赤のはかま姿で、2年間の学生生活について「長かったような短かったような時間だったけど、ネットワークも広がり新たな発見もあった。柔道が一番好きということにも気づいた。一番の思い出は、論文の執筆で年末年始に(自宅に)引きこもったこと。これまでインフルエンザでしか引きこもったことがなく、それと同じぐらいつらかったけど、今では良い経験になった」と充実感を漂わせた。

リオ五輪後の17年4月、「柔道以外の視野を広げたい」との理由で同大学院に入学。スポーツ健康システムマネジメントを専攻した。12年ロンドン五輪女子57キロ級金メダルの松本薫さん(31)らを約1年間取材して「柔道トップアスリートの妊娠・出産」を研究テーマとした。昨年12月から本格的に論文に着手し、「引きこもり生活」が約2カ月間続いた。

3週間後には五輪金メダルと同じぐらい夢だった、体重無差別で争う「全日本女子選手権」(4月21日、横浜文化体育館)に初出場する。軽量級での挑戦は異例で、1回戦から18年世界ジュニア選手権78キロ超級金メダルの児玉ひかると対戦する。東京都予選では延長戦の試合が続いて、体の回復にこれまで以上の時間を要した。「ダメージが大きすぎて『事故』かというぐらいの疲労感で、首を支えるのもつらかった。けど、全日本に挑戦出来ることは本当にうれしい。自分らしさを出して、1つでも多く勝ちたい。柔道は体の大きさだけではないことを証明したい」。世界選手権を3度制し、五輪に3大会出場した29歳の柔道家が、2つ目の夢に挑戦する。