東京オリンピック(五輪)代表でエースの張本智和(16=木下グループ)が男子シングルスの「完全制覇」にあと2勝と迫った。準々決勝で吉村真晴(26)に4-0とストレート勝ちした。

初戦から4試合連続で1ゲームも落とさず完勝を続ける。19日の準決勝、決勝もストレート勝ちで優勝すれば、87年の糠塚重造(川鉄千葉)以来、32大会ぶりの偉業となる。女子ダブルスは伊藤美誠(19)早田ひな(19)組が3連覇。混合ダブルスに続く2冠となった伊藤は19日のシングルスで史上初となる3年連続3冠に挑む。

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他者を寄せ付けない圧倒的なオーラを身にまとった張本が、初戦から無傷で準決勝進出を決める16ゲーム目を取り切った。相手は16年リオデジャネイロ五輪団体戦代表の吉村真だったが、1~4ゲームで順に6、5、4、5点しか与えず、完勝した。

「1ゲームも与えない」と気合に満ちて挑んだ昨年は準決勝敗退で連覇を逃した。「自分の方が強い」「簡単に勝つ」と言い聞かせ肩肘が張っていた。自分の中に潜む弱さや不安から、そう虚勢を張っていた。

昨年4月の世界選手権。8強を争う戦いで、当時世界ランキングで4位だった張本は157位の19歳、安宰賢(韓国)に敗戦。同6月のジャパンオープンでも599位の中国選手にストレートで初戦敗退を喫した。格下で向かって来る選手に対し、受け身になる弱さをメディアから指摘され、悔しい思いをした。

それまで高い目標を口にし、自分を鼓舞するモチベーションの上げ方を続けてきたが、苦しかった19年シーズンの中盤を経て考え方を少し変えた。吉村真戦も「1、2ゲームは取られる想定で」臨んだ。気持ちに余裕を持たすことができ、「1年間の経験で大人になった」と自己評価した。

張本の代名詞「チョレイ!」という叫び声も「まだ80%ぐらい」の声量と言い「100%を出すときは危ないときなので、できれば出したくない」と軽いジョークで記者団を笑わせる余裕もあった。

東京五輪に向けて「日本一の選手として臨みたい」と話す。そこに1ゲームも失わない「完全制覇」が加われば、悲願の五輪金メダルへ、さらに勢いづくはずだ。【三須一紀】