【ソルトレークシティー(米ユタ州)=矢内由美子】女子団体追い抜きで高木美帆(25=日体大助手)、高木菜那(27=日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(23=ANA)が組んだ日本が2分50秒76の世界新記録で2年連続3度目の金メダルに輝いた。18年平昌五輪から3季連続の世界一だ。

女子500メートルは小平奈緒(33=相沢病院)が36秒69で3年ぶり2度目の優勝。

男子500メートルは新浜立也(23=高崎健大職員)が34秒03で銅メダルを獲得。男子1万メートルの土屋良輔(25=メモリード)は自身の持つ記録を14秒69縮める12分55秒62の日本新で5位入賞を果たした。

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進化した3人娘が、お家芸種目で約2年ぶりに世界記録を樹立した。17年12月に高木美、高木菜、佐藤で出した2分50秒87の世界新を、同じ顔触れで0秒11塗り替えた。

「勝てることを証明できてうれしい」。エースの高木美は満面の笑みで表彰台の真ん中に上がると、高木菜、佐藤とつないだ手を頭上高く掲げ、喜びを表した。

一糸乱れぬ隊列を最後までキープし、電光掲示板に「ワールドレコード」の文字を浮かび上がらせた。更新は0秒11だが、充実感は数字以上。今季から団体追い抜きは安全面を考慮して、ヘルメット着用と「カットレジスタンス生地」という破れにくいスーツの着用が義務づけられている。手足を動かしにくいスーツを着ての記録更新は鍛錬の成果以外の何ものでもない。

初の1分49秒台入りも見えるスーパー時計の原動力は、個々の進化だ。今や1500メートルの世界記録保持者となった高木美を中心に、姉の高木菜が個人種目で1ケタをうかがえるようになり、今季前半戦に不調だった佐藤もすっかり力を取り戻した。

「勝てるということを証明できてうれしい。でももっと強くならなければいけない」と高木美。姉の高木菜は「まだ美帆に助けられている。もっと個の力をつけないと、オランダとの差も縮まっている」と警戒する。佐藤は「この種目の勝利は譲りたくない」と表情を引き締める。

2年前は緻密なチーム技術を強みに世界記録を打ち立て、その技術は平昌五輪金メダルにつながった。お家芸にさらに磨きをかける追い抜き娘の目は、早くも北京五輪の頂点を見つめている。