尚志(福島)水泳部の野矢育夢(2年)が「競泳界のKID」になる。強く、常にポジティブに生きてきた総合格闘家の故山本“KID”徳郁さんが憧れで、自身も同様にプラス思考。県、東北の短距離自由形で1年時から怪物の片りんを見せ「来年のインターハイで優勝し、まずは全国で敵なしの選手になりたい」。水中最強へ進化を続ける。

18年の全国中学総体(全中)50メートルを24秒35の東北中学新記録で準優勝した逸材は、高校でも鮮烈デビューを飾った。昨年6月の県高校総体の50メートルを24秒01の大会新で制し、100メートルでも3位。同7月の東北大会で50メートル2位、100メートル4位と堂々の成績を収めた。しかし、同8月の全国高校総体(インターハイ)は決勝に進めず「県大会、東北大会と比べたらレベルの差があり、まだまだだと感じた」と壁にぶつかった。

それでも昨秋の国体少年B(中3、高1)50メートルで8位入賞。県新人大会では50メートルと可能性を広げるために出場した400メートルの2冠を達成し、その後の東北新人大会は50メートル優勝、400メートル3位だった。高1時を振り返り「自分の中ではもう少しできたと思っている」。満足感は一切ない。

天国のヒーローから刺激を受ける。「KIDさんの生き方が大好き。つらいときでも周りにそういう表情を見せない姿とかがかっこいい」。新型コロナウイルスの影響を受け、プールで1カ月泳げない試練も「休んでも頑張れば元に戻るのは分かっていたので、不安はなかった」。腕立て、腹筋、ランニングなどできる練習を地道に続けた。

50メートル自由形の県記録22秒81、同日本記録21秒67更新を目指し、オリンピック(五輪)も視野に入れる。「(24年)パリで1回どんな舞台か見てから、その次(28年ロサンゼルス)で金メダルを取りたい」。0歳からプールに通う水泳の申し子が夢を育む。【山田愛斗】

◆野矢育夢(のや・いくむ)2003年(平15)8月20日生まれ、郡山市出身。ベビースイミングで0歳から母とプールに通い始め、幼稚園年中頃から選手コースで練習。富田中を経て19年に尚志入学。好きな選手はケイレブ・ドレセル(米国)。好きな食べ物は干し芋、干し梅。趣味はスニーカー集め。家族は両親、兄、弟。179センチ、72キロ。