全日本選手権2連覇中の小松原美里(28=倉敷FSC)コレト・ティム組(29)が合計179・05点で初優勝した。GPシリーズ優勝も初めて。小松原は「とても感動しています。ここに来るまで、すごく長い時間がかかっているし、2つとも強いプログラムを見せられたことを誇りに思います」と胸を張った。

大会直前に日本国籍を取得したコレトも「自分の中では、日本人として勝てると思っていなかった。1回も勝てないと思っていたので光栄に思います」と喜んだ。

昨年のNHK杯は欠場した。夏の練習中、氷に落下した頭部を強打した小松原の症状が再発し「頭部外傷後、脳震盪後、外傷性頸部症候群」と診断された。復活も、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で「1人1大会」「母国、近隣国および練習拠点国」に出場が制限される変則開催。出場は日本の3組だけながら、国内の第一人者の意地と実力で圧倒した。

拠点のカナダに帰ることもできず、岡山で調整。コレトは「リモートで指導を受けるのは大変だった。もっと頑張らないといけないけれど、今日は良い演技ができました」と道のりを感慨深そうに言った。

小松原も「私たちのコロナとの関係がスタートしたのは(今年3月)世界選手権中止から。すべてのスケーターだけでなく、全世界の人たちが1度に大変なことを経験した。その中で今回、徹底した管理をしていただいて試合ができて格別です。感謝でいっぱいです」と頭を下げ、コレトも「今年は特に難しい年。皆さん、一緒に頑張りましょう!」と一体感を求めた。

演技は、この日もツイズルやリフトで質の高い演技を見せ「あじさい」をイメージしたという新衣装で氷上に美しい花を咲かせた。小松原は「昨日の演技から距離感というものをよく考えて朝練からやってきました。朝練の時は調子が良くなかったんですけど、話し合って、本番でより良い演技ができた。プロフェッショナル度が上がった」と納得の大会となった。

3000人に迫る観客が詰めかけた今季初の“国際大会”。小松原は「この大会をつくってくださり、心より、ありがとうございます。1日1日を大切に、もし次の大会があってもベストを出せるよう頑張りたいと思います」と話し、コレトも「体の調子を上げていきたい。波に乗れるよう、もっと上げていきたい」と上を見た。

目指す2022年の北京オリンピック(五輪)。見える輪郭が色濃くなってきた。それでも「(地元が同じ田中)刑事君とか、周りは、みんな五輪に出ているので。追いつけたというより、やっとスタートラインに立てた感覚。これからも日本人の意識を持って、アイスダンスを通して、小さい子たちが誇りに思ってくれるような人間になっていきたい」と小松原は謙虚に初Vを受け止めた。