女子ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(20=シスメックス)がGPシリーズ初優勝を飾った。フリーも1位の153・91点を記録し、国際スケート連盟(ISU)非公認ながら合計229・51点の自己ベストをたたき出した。

心地よい充実感の上をいく、最高の景色が待っていた。「うぉ~!」。229・51点の数字を目にし、坂本が思わず叫んだ。2季目となる「マトリックス」。ジャンプ7つに全て加点がつき、表現面を示す10点満点の演技構成点は5項目中4項目で9点台。「去年クリーンに滑りきったことがなかった。ノーミスだったら、こんなに出るんだな」。これを目指していた。

1年前のある日、神戸のシンボル「ポートタワー」を見ながら、波の音を聞いた。「はぁ…無理やな」。昨季は4回転など高難度ジャンプを跳ぶ周囲を気にし、表彰台を逃し続けた。気分転換で散歩しても、次の練習が来れば元に戻った。

「自分も『どうにでもなれ』って投げやりで…。練習が嫌すぎて、先生の話すら耳に入ってこなかった」

今年1月、24歳の川原星コーチから「かおちゃん、4回転やればいいのに」と声をかけられた。やってみると、少し手応えがあった。「これ跳べたら戦えるんちゃうん!?」。ベクトルが自分に向く転機になった。

「『今きついけど、試合の時に笑顔になろう』と思ってやっていました。それが今日こういう形で発揮できて、うれしい限りです」

今春、新型コロナウイルスの影響で氷に1カ月半乗れなくても、自分だけを見て努力を重ねてきた。坂本は、変わった。【松本航】