始まりの春がやって来た。日刊スポーツは連載「春START UP」で、新たなスタートを切る各界の個人、団体を紹介する。第1回はバドミントン女子で北海道勢唯一のU19日本代表・岩戸和音(15=旭川愛宕中出)。4月から総体団体優勝10度、12年ロンドンオリンピック(五輪)女子ダブルス銀メダル藤井瑞希、垣岩令佳の母校・青森山田高に進学。“虎の穴”で次代のオリンピアンを目指す。

15歳の岩戸が飛躍の地に選んだのは同じ雪国・青森。旭川から世代トップが集う強豪に進学。5日からは同校の寮に入り新生活を始める。「高校3年間でインターハイを優勝して全国で一番になりたい」。12年ロンドン五輪ダブルスで銀メダルの「フジカキ」ペアこと藤井、垣岩らを生んだ名門で技術を磨いていく。

今年1月に発表されたU19日本代表18人中、中学生は6人だけだった。砂川市出身で同学年の石岡空来がふたば未来学園中(福島)に進学したように、有望選手は中学から他県の強豪に進む傾向にある。16、17年全国小学2連覇の岩戸は地元に残り旭川愛宕中に進学。同時に就任した高橋寛光監督(39)は「北海道に残ると聞いてびっくりした。とにかく練習が好き。あまり技術面で多くのことは伝えなかった」。自ら課題を把握して着実に成長した。

昨年はコロナ禍で全国中学が中止に。「練習してできるようになるのが好き」と競技の魅力を語る岩戸は下を向かなかった。道協会の協力もあり、中学では男子と混じって部活をこなし、小学時代の少年団に通い、兄和磨さん(18)が在籍した強豪旭川実にも“出稽古”。左利きで男子に負けないスピードとパワーが武器も、課題だったショット精度の向上のために練習漬けの日々を送った。

他の強豪校からの誘いもあったが、昨夏に練習参加し「1人1人の練習の意識や質が他のところと違う」と青森山田入りを決断。北海道出身で松本麻佑(25)とのペアで東京五輪ダブルス代表をほぼ確実にしている永原和可那(25=芽室中出)と同じルートで次代のオリンピアンを目指す。「将来的には日本代表に入って世界で戦いたい。24年パリ五輪を目指したい」。五輪へと続くシャトルを追って、津軽海峡を渡る。

◆岩戸和音(いわと・かずね)2005年(平17)11月4日、旭川市生まれ。旭川凌雲小1年で競技を始め、旭川愛宕東小5、6年の全国小学で学年別シングルス2連覇。旭川愛宕中2年の全国中学8強。同年、U15庄内国際招待で日本勢最高の2位。好きな選手は世界ランク1位の戴資穎(台湾)。好きな歌手はBTSで、寮には段ボール1箱分のグッズを持参。154センチ。家族は両親と兄。