先月24日に53歳で死去した92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦さんの長男で、18年全日本学生体重別選手権73キロ級覇者の颯人(23=慶応高教)が、体重無差別で争う全日本選手権関東地区予選(4月29日、埼玉県立武道館)に出場することが5日、分かった。

次男で60キロ級の玄暉(げんき、22=旭化成)が全日本選抜体重別選手権を制し、6月の世界選手権(ブダペスト)代表に初選出された4日に、神奈川県予選で優勝した。県予選は当初、今年1月に開催予定だったが、コロナ禍の影響で延期となり運命的にも兄弟で同じ日に亡き父へ吉報を届けた。関東地区予選で、上位6位までに入ると本戦(12月26日、東京・講道館)の出場権を得られる。

全日本選手権は、古賀さんが90年大会決勝でバルセロナ五輪95キロ超級銀メダルの小川直也と7分超の熱戦を繰り広げた伝説の舞台。169センチと小柄ながら、芸術的な背負い投げと一本背負いを武器に、次々と重量級を撃破し「平成の三四郎」の異名を取るきっかけとなった。

柔道界のスターのDNAを継ぐ颯人は、小学、中学と全国制覇。愛知・大成高時代は父と同じ中量級の73キロ級で、内股を武器に高校選手権や高校総体準優勝などの実績を誇る。その後も玄暉と、妹で19年アジアジュニア選手権57キロ級覇者のひより(20=環太平洋大)とともに国内外大会で活躍した。

日体大時代は、同じ学年で東京五輪男子66キロ級代表の阿部一二三(パーク24)らと切磋琢磨(せっさたくま)した。18年全日本学生体重別団体ではチームの初優勝に貢献した。大学卒業後は慶応高の教諭となり、柔道部を指導する傍ら、自らの鍛錬に励んでいた。

先月29日の葬儀・告別式では施主を務め、参列者に父の教えと遺志を受け継ぐことを誓った。偉大な父の背中を追う23歳の長男は、亡き父が日本柔道の歴史に名を刻んだ、あの「伝説の舞台」に挑戦する。