今年9月のシドニー五輪に参加する水泳の日本代表選手団が24日、発表された。競泳は23日に閉幕した日本選手権の各種目2位以上の選手から、21人(男子9人、女子12人)を選出。女子自由形の千葉すず(24=イトマンSS)の代表落ちが、正式に決まった。200メートル自由形で優勝しながら、昨季世界ランク17位相当という理由で外された。実績を無視した選考で水泳界に波紋が広がった。女子平泳ぎの田中雅美(21=中大・JSS)が、代表チームの主将役を務めることが濃厚になった。

日本選手権200メートル自由形でシドニー五輪A標準記録を突破し優勝した千葉が漏れた理由について、日本水泳連盟から明確な説明はなかった。記者会見で質問が集中したが、青木剛・日本代表監督(53)は「個々の選手の選考内容についてはコメントしません」と口調を強めて繰り返しただけ。約40分の会見では説明はなく、会見後に日本水連の役員の1人が「メダルを狙える選手を選んだ。千葉は100メートル自由形で力を抜いているように見えた。200メートルにしてもメダルを獲得できるレベルではない」と重い口を開いた。

なぜ千葉は落選なのか。青木監督は以前から「五輪A標準をギリギリ突破した程度では選ばない可能性も」と話していた。確かに千葉の記録は世界ランキング17位と平凡だったが、ランク15位の平野と同16位の荒瀬は選ばれた。この理由について日本水連関係者は、長距離(1500メートル)の特性や選手の個性などを挙げた。だが、ランキング重視の選考という基本を考えると疑問符がつく。

世界ランク17位やタイムなどの記録面以外にも、落選の理由はあるようだ。はっきりとものをいうタイプの千葉が、日本水連関係者の心証を悪くした可能性は否定できない。20日の日本選手権3日目。千葉は女子100メートル準決勝2組で、ライバルの源純夏(中大)に敗れた時に「私が本領を発揮したときは、悪いけど(源と)同じレベルだとは思っていないので」と話した。負けず嫌いはスポーツ選手の起爆剤とはいえ、それをそのまま口にした。「代表に選ばれてもカナダでトレーニング」「シドニーでは選手村に入らない」という発言もあったとされる。日本水連では選手個人の練習方法などを尊重しているが、日本代表チームを考えたとき本音発言がチームの和を乱すとして警戒されても不思議はない。

今までの関係者の話を総合すると、競技レベル以外の部分で選考に漏れた可能性は否定できない。メダルなしに終わった4年前のアトランタ五輪は高校生以下の選手が多かったが、今回は大学生以上の選手が21人中17人。競技以外でも責任の持てる大人のチームとして戦うために千葉を切ったとも考えられる。

だが、千葉の泳ぎを見たかったファンも多い。今回の代表選手選考法が正しかったかどうかは9月のシドニー五輪の結果で決まる。

★古橋広之進・日本水連会長 五輪標準記録Aを突破して、その中から戦える選手を選んだ。千葉とか、そんなの関係ない。方針としては一貫している。

◆この日の千葉 千葉はこの日、都内のホテルで静養した様子で、関係者の電話連絡などにも応答はなかったという。関係者によると、代表落ちを知らされた23日夜には「私を応援してくれる子供たちの夢をつぶしてしまったことが残念。でもシドニー五輪がすべてではないので」と気持ちを切り替えていたという。近日中に山本貴司(近大)とカナダ・トロントに帰国。元の留学先の米ロサンゼルス郊外で水泳指導の仕事を再開する予定。