女子テニスで世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が、パリで30日に開幕する4大大会、全仏オープンで記者会見に応じない意向を明らかにした。自身のツイッターを27日に更新し、「アスリートの心の健康状態が無視されている」「何度も同じ質問をされたり、私たちが疑念を抱く質問を受けたりすることが多い」などと訴えた。テニスの大会では会見に応じる義務があり、どんな質問も受けるのが慣例だが、多額の罰金を受け入れ会見を拒否する。

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物言うアスリート、大坂が「心の健康」という新たな問題を提起した。「(全仏の)大会に対する個人的な思いとは関係ない」と強調した上で、「敗戦後の会見場で泣き崩れる選手の映像を何度も見た。落ち込んでいる人に追い打ちをかけるもので理解できません」と訴えた。

テニスのツアーは、選手にプロとして多くの義務を課す。大会中に行うファンサービスや報道陣に対する活動も、細かく決められている。プロは、ファン、スポンサー、大会、メディアに支えられ成立しているという発想から生まれた制度だ。だから、違反すると罰金が科される。

しかし大坂は、その制度自体に「“会見するか、さもなくば罰金だ”と言う統括組織は、選手の心の健康状態を無視しており、笑うしかありません」と疑問を投げかける。そして「(自分が払う)高額な罰金が心の健康維持の慈善活動に寄付されることを願っています」と皮肉った。

テニスは多くの他の競技と違い、立ち話をするミックスゾーンや囲み取材という報道対応がない。報道陣は試合前に記者会見を要請する。要請された選手は、勝敗に関係なく会見を開くことが義務づけられている。拒否すれば、4大大会では1回につき最大2万ドル(約220万円)の罰金が科される。

大坂は必ずしも報道陣への不信感ばかりではない。「若い時から私を取材してくれている報道陣もいますし、その大半とは友好的な関係」とも語る。ただ19年のウィンブルドンでは1回戦負けし、直後の会見中に「これ以上続けられない」と取り乱し、泣きながら退席したことがあった。

大坂は昨年の全米、今年の全豪を制し、今回の全仏でも活躍が期待される。全仏のコートとなる赤土は苦手で、前哨戦では2大会に出場し、1勝しかできなかった。今回の拒否宣言は、報道陣からの雑音を封印し、テニスだけに集中したい表れだという見方もある。

◆過去の主な会見拒否 日本では94年2月の東レ・パンパシフィックオープンで、宮城ナナとのペアでダブルス1回戦に勝利した伊達公子が、試合後の会見を拒否した。全豪オープンで4強入りした直後の帰国初戦で心身の疲労がピークだったためだが、WTAは750ドル(当時のレートで8万2500円)の罰金を科した。4大大会では16年の全豪で1回戦で敗れたビーナス・ウィリアムズ(米国)が会見を拒否して5000ドル(同約59万円)の罰金制裁を受けた。