世界王者のノバク・ジョコビッチ(34=セルビア)が、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)と並ぶ男子歴代最多の4大大会20度目の優勝の偉業を達成した。

イタリア初の大会優勝に挑んだ同9位のベレッティーニに6-7、6-4、6-4、6-3の4セットで勝ち、1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来52年ぶり、男子史上3人目の年間4大大会全制覇に王手をかけた。

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2年ぶりに開催された聖地の芝の味は、特別に美味だったに違いない。マッチポイントが決まった瞬間、ジョコビッチは大の字になり、自らの記録を祝った。最後は優勝時恒例のパフォーマンスで、芝を口に含んだ。「人生の中で、最も完成度が高い状態」と34歳にして全盛期を強調した。

男子テニスは、歴史の頂点のまっただ中にいる。4大大会優勝回数でトップを走る「ビッグ3」はそろって今も現役だ。全員が30歳を超えているが、ジョコビッチは「年齢は感じていない。自分は最高の選手だと信じている」と、さらなる飛躍を信じている。

4大大会20勝の先に大きな歴史が見える。世界のテニス界で最大の記録、年間4大大会全制覇だ。男子では38年バッジ(米国)、62、69年レーバー(オーストラリア)の2人で3度しか達成されていない。最初の3大会を制したのさえも、69年レーバー以来だった。

バッジ、レーバー時代は全仏以外の3大会は芝コートだった。現代は芝、赤土、ハードの3種類のコートを1年で制する必要があり、過密日程の中、至難の業と言われる。女子でも53年コノリー(米国)、70年コート(オーストラリア)、88年グラフ(ドイツ)の3人しか達成していない。

ジョコビッチに残されたのは、最も得意なハードコートの全米だけだ。もし優勝すれば、3人で並ぶ4大大会最多優勝回数から単独で抜け出し、52年ぶり史上3人目の年間4大大会全制覇で、男子歴代最高の選手の称号を得るだろう。

○…同一シーズンで4大大会と五輪のすべてを制することを「年間ゴールデンスラム」と呼ぶ。男女合わせ、88年に女子のグラフ(旧西ドイツ)しか達成していない最難関だ。その記録にもジョコビッチは迫っている。東京五輪にエントリーしており、会場となる有明テニスの森公園は19年楽天オープンで経験済み。五輪、全米ともに大好きなハードコートだ。ただ、ウィンブルドンの優勝会見で「出場は五分五分」と話した。以前から「無観客なら(欠場を)考えたい」と意向を示し、スタッフの人数が制限されるのも一因のようだ。