18年の全日本ジュニア選手を制した横井ゆは菜(21=中京大)が、逆襲で準優勝をつかみ取った。

前日のショートプログラム(SP)はミスが響いて7位と出遅れたが、この日は最後の3連続ジャンプの一部で回転不足があった以外はノーミスと復調。フリー2位の125・08点をマークし、合計176・53点で総合2位まで順位を上げて準優勝した。

今季のフリー曲は英ロックバンド、クイーンのメドレー。「不安を抱えたままではあったけど、振り切って試合に臨めたので良かったな」。納得の出来に、フィニッシュでは右拳を大きく振り抜くガッツポーズを繰り出し「何か、ここまでやっとこられた…」と万感の思いを言葉にした。

ここまで、と語ったように、このフリーで復活するまでは落ち込み、スケートを続ける意味すら見失いそうになっていた。前日は散々の7位。それでも、今大会で小さな子供たちのスケートを見てモチベーションを取り戻し、この日は朝から試合までの時間に、クイーンのメドレーに採用した「ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ」の歌詞を和訳してみた。

「くよくよしている暇はない」

そんな一節に心を打たれ「めっちゃ、くよくよしてるわ、私って。今の自分に必要な歌詞が入っていて、ほかにも明るい曲なのに楽しくなさそうに滑っても合わないなと思ったり」。氷上では、気持ちのこもった演技に多彩な表情を見せ、最後は泣きそうになるほど世界に入り込んだ。

「今の自分に足りないものだった。この歌詞のような気持ちで挑めれば」と勇気をもらい、エントリーしているグランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカ(10月22~24日、ラスベガス)に向けては「ちゃんと歌詞の意味を理解して体現したい。今日のフリーを終えて、試合への気持ちの持っていき方が分かった」と光が見えた。

この気持ちを忘れない。「やっぱり、どうしても気分が落ち込む時もあるんですけど、どんな状況であっても、泣いてしまいたいぐらいの時でも、演技することで明るくなりたい。最後のジャンプは3連続から2連続にして、確実に決めることも考えています。そうすることで、最後の表現に高揚した気持ちのまま向かえる。はじけるような、これが『横井ゆは菜の演技だ』と思ってもらえるように気持ち良く演じたい」と今季の方向性を見いだした。【木下淳】