女子62キロ級で慶大1年生の尾崎野乃香(18)が銅メダルを手にした。敗者復活戦を勝ち上がり迎えた3位決定戦で、ウクライナ選手に12-0でテクニカルフォール勝ちした。

「世界ランク1位の選手に負けて、こうすれば良かったというのは出てきますが、前の自分なら初戦で強い選手に負けたら、帰りたいと思っていた。そこから戦える力はなかった。ここまで気持ちを切り替えてやれた。苦しかったですけど、そこは自分を褒めたい」。涙を浮かべながら、初出場の世界舞台を終えた。

前日の初戦だった。東京五輪銀メダリストで、世界ランク1位のティニベコワ(キルギス)といきなり激突した。持ち味の片足タックル2連発で第1ピリオドを4ー0とリードしながら、第2ピリオドではがぶられてからの対応に苦しみ、4ー6の逆転負けを喫していた。

3位決定戦の後の決勝で今大会も優勝した強豪。勝利が見えていただけに、敗戦のショックは大きかった。ただ、「メダルを取らずに帰れないと思って。もう1つ成長しないといけない」と気持ちを奮い立たせた。両親からも「すごく良い試合だった。あと2試合頑張れ」と激励を受けた。迎えた翌日は、その誓いを体現した。

7歳で競技を始めた。テレビで女子レスリングと偶然目にし「格好いいな」と思ったのがきっかけだった。「レスリングも偏るという考えではなく、人生を終えた後にやりたいことをやりたい。興味があることにもいまのうちから勉強して知識を広げたい」と文武両道を進み、現在は慶大に通う。

大学のレスリング部では早大に続く伝統を誇る慶大だが、スポーツ推薦入試などはなく、トップレスラーの所属は珍しい。世界選手権出場は1957年(昭32)大会男子フリースタイル57キロ級銅メダルの島村保行以来64年ぶりで、女子では初のメダル獲得となった。

62キロ級の五輪王者は川井友香子。「いつか対戦することがあったらしっかり自分も勝つ気でいきたい」と構える新星。「日本に帰って練習して、来年は優勝したい」。糧にする銅メダルとなった。