世界のテニス界で、来年の1月17日に開幕する全豪オープンが、新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり騒動になっている。発端は、10月1日に会場のメルボルンがあるビクトリア州のアンドリュース州首相が、州内のスポーツ選手を含む労働者にワクチン接種を義務化したところから始まる。

同州首相は「4大大会に優勝しても、新型コロナウイルスから健康を守れない。守れる唯一の方法はワクチン接種だけ」と話した。しかし、同27日にオーストラリアのモリソン首相が、ワクチン未接種者は、入国後の2週間の隔離を経れば出場できる可能性はあるとし、話がややこしくなった。

加えて、女子のツアーを統括運営するWTA(女子テニス協会)が「ワクチン未接種でも2週間の隔離をすれば出場できる」というメールを送っていたことが発覚。それを受け、再び同州首相は「特例申請はしない」と、ワクチン未接種者の出場を許可しないことを念押しした。

テニス界ではワクチンの接種、未接種を明らかにしていないトップ選手が多い。他競技に比べ、テニス選手のワクチン摂取率が低いとの報道もある。特に、世界王者で21年全豪覇者のジョコビッチ(セルビア)は、未接種といわれ、その言動に注目が集まる。ジョコビッチは「出場するかどうかは分からない」と話している。

元世界王者で、2度の五輪金メダルのマリー(英国)はワクチン接種推奨派だ。「オーストラリアが厳しくすることは理解できる。支持する」と話し、6月に接種を終えていることを明かしている。逆に、世界4位のズベレフ(ドイツ)は「無理強いは良くない。接種していない選手も尊重されるべき」と、接種義務化に慎重派だ。

たばこの議論に似ているのではないだろうか。例えば、カフェを全面禁煙、喫煙室をつくる、健康増進法改正前の20年4月以前なら分煙など、オーナーの意向で決められる。喫煙者、非喫煙者が、そのカフェに行くのは自由だがカフェの規則は守る必要がある。全面禁煙のカフェで、たばこを吸えば、追い出されるわけだ。

オーストラリア国外の報道陣に対しては、10月初旬に、入国の指針が提示された。それによると、12月14日までにワクチンを接種すること。加えて、20年大会と同様に、大会が用意したチャーター便で入国。その後は、2週間の隔離もある。なかなか厳しい制限となっている。【吉松忠弘】