羽生結弦(27=ANA)が、国際スケート連盟(ISU)非公認ながら今季世界最高となる111・31点をマークした。初披露したピアノ曲の新SP「序奏とロンド・カプリチオーソ」で首位発進した羽生について、10年バンクーバー五輪代表で、11年世界選手権銀メダリストの小塚崇彦氏(32)は「羽生選手自身が曲を主導しているからではと思えた」と語った。

    ◇    ◇    ◇

【関連記事】フィギュア全日本選手権男子SP速報

羽生選手には、「すごい」という言葉しか思い浮かばない。会場で見ていて、終わった瞬間に観客のみなさんを椅子から立たせてしまう勢いがあった。激しい曲ではないのに、そこに、どんどん心が引き込まれて、いつの間にかリンクに引っ張られ、ただ最後の大きな旋律でバーンと我にかえらされる。

すごさを生んだのは何か。静かだけど、何か煮えたぎるような感覚は、羽生選手自身が曲を主導しているからではと思えた。ピアノを弾く清塚さんが感性で弾いた曲に合わせるのではなく、逆に羽生選手が滑ることに清塚さんが合わせているような。選手は普通は音に合わせるが、音が合わせてくる、そんな不思議さを覚えた。

4回転に組み込むトーループとサルコーはこうすればできると自信がある技。強いて言うなら、トーループの着氷で踏ん張りましたが、沈み込んだところから3回転トーループをつけられるのは、幾度となく危機を乗り越えてきたからでしょう。ジャンプより、プログラムをきっちり自分のものにしている。曲の解釈が10点満点なのは、ジャッジも先導するような感覚を得たからではないか。

宇野選手も含め、上位の2人からは、落ち着きを感じました。五輪の最終選考というより、自分がやるべきことを明確にして戦っている。五輪での経験値など、抜けたものがありました。(10年バンクーバー五輪代表、11年世界選手権銀メダリスト)