新型コロナウイルスワクチンの接種免除の要件を満たしていないとして、男子テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(34=セルビア)がオーストラリアへの入国を拒否された問題で物議を醸している。

<ジョコビッチと全豪オープンを巡る経緯>

◆出場発表 全豪オープン(17~30日、メルボルン)の主催者は1月4日、4連覇と4大大会歴代単独最多となる21勝目が懸かるジョコビッチの出場を発表。全豪オープンは、出場全選手にワクチン接種を義務づけたが、医学的見地から、接種免除を許可する可能性も明かしており、ジョコビッチが免除許可を承認された。

◆入国拒否 ジョコビッチは、全豪出場のためオーストラリア・メルボルンの空港に、1月5日深夜に到着したが、入国を拒否された。同国の国境警備隊が同6日に明らかにした。入国に必要な証拠を提示できなかったとして、入国ビザを取り消した。モリソン首相も決定を支持。

◆異議申し立て 入国拒否にセルビアのブチッチ大統領はインスタグラムに「嫌がらせを一刻も早くやめさせる」と反発し、国を巻き込んだ騒動に発展。ジョコビッチの弁護団は6日、国外への強制送還を阻止するため裁判所に異議を申し立てた。本人は空港で足止めをくらっていたが6日午前、メルボルンの隔離ホテルに移送された。

◆入国認める オーストラリアの裁判所は10日、ジョコビッチの入国を認める判断を示し、政府に対して選手を収容先から即時に解放するよう命じた。入国を拒否し、ビザを取り消した連邦政府の決定は「合理性がない」とした。現地メディアは「ジョコビッチの勝利」と伝えた。

◆声明発表 男子の世界ツアーを統括し、選手組合の機能を持つATPは10日、声明で裁判所の判断を歓迎した上で「今回の問題はノバク(ジョコビッチ)の健康や大会への準備を含め全ての面にダメージを与えた」と競技への影響を懸念した。

◆練習再開 ジョコビッチは10日夜、メルボルンの会場で練習を開始。11日未明、ツイッターで「このようなことがあってもオーストラリアにとどまり、全豪オープンに出場したい」とつづった。ただ、同国のモリソン政権の報道担当者は「裁判所の判断後でも移民相はジョコビッチ選手の査証取り消しを検討する裁量権を有している」と話している。