【北京30日=松本航】来月4日開幕の北京オリンピック(五輪)にフィギュアスケートのペアで出場する三浦璃来(20)、木原龍一(29)組(木下グループ)が団体戦初のメダルを獲得し、ご褒美のピザを頬張る。30日午前0時45分ごろに現地入り。木原は睡眠1時間、三浦は眠らず、午後0時15分から日本勢一番乗りで初練習した。本番会場となる首都体育館で雰囲気や滑りを確認。団体戦躍進の鍵を握る「りくりゅう」は平常心を貫く。

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初の五輪となる三浦が笑った。「遊園地みたい!」。選手用、メディア用に動線が分かれ、一見複雑に見える取材エリア。練習後、一睡もしていないとは思えない明るさで「すごい迷路みたいじゃないですか。あらゆるところに五輪マークがある。『ようやく来られたんだな』『選手として幸せだな』と思いました」と声をはずませた。和やかな雰囲気は、目指してきた夢舞台でも変わらなかった。

青に統一された会場を氷上で見渡し、木原はゆっくりと手を挙げた。前、後ろ、右、左、そして上。リフトの際に目に入る照明の加減を確かめ、2人で滑り始めた。ショートプログラム(SP)「ハレルヤ」をかけての通しでは、三浦を投げるスロージャンプなどを回避。別のパートナーと14年ソチ、18年平昌大会を経験した男は「今日は足慣らしの予定でした」と明かした。今大会は開幕日の来月4日に団体戦のSP、7日にフリーを滑り、中国で盛んなペアは個人戦最後の18日と合間が長い。2人は“ご褒美”を用意している。

木原 「普段油ものは1~2カ月に1回にしていて、2人で楽しみに頑張っています。今、三浦さんは携帯の待ち受けがファストフードの画像になっていて…」

三浦 「何でばらすの!(画像は)ピザです」

木原 「それ(団体戦でメダル獲得後)が理想ですね。うまくいけばいいですけれど。ピザ食べたいです」

演技では男子が女子を持ち上げ、時に投げ、そして2人そろっての出来が求められるペア。練習だけでなく、リンク外も細部を追求し、今季はグランプリ(GP)シリーズ2大会連続で表彰台に立った。世界トップレベルの一角に成長し、2人で初めて臨む五輪だ。木原は堂々と言い切った。

「本当にいい仕上がりで、技術的な不安はないです。とにかく特別視せずに、やることをやって、あとは気合と根性だと思います」

メダルをつかみ、大好きなピザで祝う。【松本航】

○…採用3大会目の団体戦で、日本は初のメダル獲得を目指す。過去2大会はともに5位。男女シングル、ペア、アイスダンスの総合力が問われるため、カナダ、ロシア(今大会はROC)、米国が3強として君臨する。日本はかねて競技力が高い男女シングルに加え、ペアの三浦、木原組の躍進によりメダル候補となった。

前回大会のペアはSP10チーム中8位、決勝となるフリーは5チームの最下位。1位10点、2位9点…と与えられる団体戦の得点で日本のペアは9点にとどまり、金のカナダと10点、銀のロシアと9点、銅メダルの米国と5点差がついた。

今季の三浦、木原組はGPシリーズ上位6組が出場するファイナル(新型コロナウイルスの影響で中止)への出場権を手にしていた。他はロシアが4組、中国が1組で、カナダ、米国勢はいなかった。この日、木原は「今回は自分たちのやってきたことを出して、結果を残したい気持ちが強い」と誓い、自信を示した。