世界女王の藤波朱理(18=日体大1年)が公式戦100連勝を達成した。

あと1勝としていた決勝で17、18年世界選手権優勝の奥野春菜(23=自衛隊)を4-0で下して到達。中学2年の17年9月から積み重ねてきた連勝記録を大台に乗せた。同じ階級で五輪V3の吉田沙保里、大学で師事する同4連覇の伊調馨に続く史上3人目となり、目指す24年パリ五輪金メダルへ弾みをつけた。2連覇が懸かる9月の世界選手権(セルビア)代表にも内定した。

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強い。藤波が完封で100連勝を遂げた。決勝で元世界女王を寄せ付けない。得意のタックルを仕掛けて2点を奪い、終盤にもカウンターで追加点。偉業にも表情を崩さなかったが、表彰式後は「100」の風船の空洞から顔をのぞかせ18歳らしい笑みがはじけた。

「連勝は過去のこと。マットに上がれば関係ない」と集中したが「寝る前とか負けたらどうしよう…と思う日もあった」という。結果は無双。「不安を消すために毎日練習してきた」。大学では3階級上の伊調ともスパーリングし「(五輪V4の)馨さんの重圧とは比にならない」。100連勝を小さく感じさせてくれる環境で鍛えられている。

日本協会が公認する連勝は前大会まで「97」。中学2年の夏を最後に負けておらず、白星だけを17年9月から約5年間、積み上げてきた。昨年は伊調らに並ぶ史上5人目の高校生世界女王に。内容も全4試合テクニカルフォール勝ち&無失点だった。「無敗でパリ五輪に行って金メダルを取る」の目標も高く見えない。

今春から2人で暮らす父俊一コーチとも喜んだ。五輪でセコンドに付く夢のため高校教員を早期退職し、支えてくれている。「父の日(翌19日)に何かあげたことがなかった」が記録で恩返し。その父に「天性のものがある」と言わしめるタックルで連勝を伸ばす。

吉田の個人206連勝と伊調の189連勝(不戦敗除く)以来3人目の大台。吉田の53キロ級の新女王は「沙保里さんは沙保里さん、自分は自分」。この階級には東京五輪金メダルの志土地(旧姓向田)真優もいるが「必ず勝ちたい」。レジェンドを追う18歳が史上最強へ突き進む。【木下淳】

◆藤波朱理(ふじなみ・あかり)2003年(平15)11月11日、三重県四日市市生まれ。88年ソウル五輪の代表候補だった父俊一コーチの影響で4歳から競技を始める。中学2年の全国大会決勝で伊藤海に負けて以来、全勝。いなべ総合学園高から今春、日体大に進んだ。総合格闘家の兄の勇飛(26)も元選手で17年の世界選手権男子フリースタイル70キロ級銅メダル。大学の同じクラスに北京五輪スノーボード日本代表の三木つばきがいる。164センチ。