4大大会初の決勝に進んだ世界ランキング23位のエレーナ・ルバキナ(23)が、カザフスタン選手として史上初の4大大会優勝を飾った。68年のオープン化(プロ解禁)以降、アフリカ勢初の4大大会優勝に挑んだ同2位のオンス・ジャブール(27=チュニジア)に3-6、6-2、6-2で逆転勝ちした。ルバキナは、ロシア・モスクワ出身で、18年にカザフスタンに国籍を変更した。優勝賞金は200万ポンド(約3億2000万円)。

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テニス選手なら誰もが憧れる聖地での優勝。「言葉にならない」と喜んだルバキナだが、優勝した瞬間も小さなガッツポーズだけ。「感情を表に出さないタイプ」と、大げさな表現など1つもなく、笑みがはじけたのも関係者席に駆け上がり、コーチや姉らと抱き合ったときだけだった。

モスクワに住む両親は「残念だけど、ここにはいない」。ただ「すごく誇らしく思ってくれるはず」。こう言うと、この日初めて感情があふれ涙を見せた。

ルバキナは「生まれる場所は選べない」という。カザフスタンに国籍を変更したのも、ロシアのウクライナ侵攻前で無関係だ。しかし、大会がロシア選手を除外する年の優勝。タイミングが悪かった。

ロシアとベラルーシ選手を除外したことに抗議し、女子テニス協会(WTA)は、今大会に世界ランキングのポイントを付与しないと決定した。例年なら優勝の2000点が入り、11日発表の最新世界ランキングではトップ10入りが確実だが、今回、世界23位は変わらない。

それでも「この優勝で、自分はなれるんだと信じることができた」。ルバキナという1人の選手が、初めてウィンブルドンを制した事実は変わらない。

◆エレーナ・ルバキナ 1999年6月17日、モスクワ生まれ。5歳でテニスを始める。18年に国籍をロシアからカザフスタンに変更し、19年ブカレストでツアー初優勝。昨年の東京五輪では3位決定戦で敗れ4位。ツアー通算3勝。自己最高位は12位。184センチ。