男子90キロ級伊藤志竜(秋田・山王中3年)が、秋田及び東北勢として22年ぶりに男子個人戦を制した。竹下智哉(福岡・田主丸中3年)に2分28秒、小外掛けから横四方固めの合わせ技で勝利。自身初の金メダルを勝ち取った。

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開始わずか数秒で相手に技ありを取られ、劣勢に立たされた。焦りはあったが、すぐに頭を切り替えた。伊藤は「技ありを取られているが3分間で終わるわけじゃない。自分の精いっぱいを3分にぶつけて勝とうと思っていました」。準決勝では、初めて延長戦(ゴールデンスコア)を経験。石井克明(静岡学園中3年)と6分27秒間戦って優勢勝ち。この経験が、決勝戦での伊藤を冷静にさせた。「延長戦は苦しかったけど楽しかった。おかげで決勝は『決めるチャンスを自分から作ろう』と冷静になれました」。得意の内股、大内刈りを中心に、前に倒そうと攻撃を仕掛け続けた。

機は熟した。植えつけた前への意識。内股をフェイントに踏ん張る相手を後ろに倒し、しっかりと抑え込んだ。「気持ちで、意地で持っていきました」。勝ちたい気持ちを前に出して、中学最後の全中をGSと金メダルの初ものずくめで締めくくった。

優勝には、22日に東北勢初の甲子園優勝を成し遂げた仙台育英の影響もあった。「僕は勝手にバトンを受け継いだりする。(仙台育英の)ニュースをめっちゃ見て、『東北で初』に勢いづけられて自分もやってやろうと思いました」。勝手にもらったバトンを東北勢22年ぶりの快挙にしっかりとつなげて見せた。「めっちゃうれしいです」。あどけない笑顔で喜びながら、目線はもう前を向いていた。「個人でもみんな(団体)でも全部で優勝を狙える選手になりたいです。気づいたら世界一になっていたら最高ですね」。いつか世界の金メダルもつかみ取る。【濱本神威】

◆中村柊斗(福島・小名浜第一中3年) ベスト16に進出。迎えた3回戦では、男子団体優勝の愛知・大成中の田内秀豊を相手に3分間戦い抜いた。中村は「(相手は)団体戦で豪快な投げを決めていた。しっかりと注意していました」。序盤から積極的に攻めたが、うまくタイミングを外され足を払われ、技ありを取られた。中村は「気持ちで少し負けていた。もっと攻めにいく柔道をしたい」と前を向いた。