東京パラリンピック金メダルで、世界王者の国枝慎吾(38=ユニクロ)が、男子シングルス史上初の年間4大大会全制覇を逃した。世界2位のアルフィー・ヒューエット(24=英国)に6-7、1-6のストレートで敗れ、昨年の東京パラリンピックから続けてきたパラリンピック、4大大会の連勝も20で止まった。

残り1勝だった。偉業に、最後、1勝だけが足りなかった。今年の全豪、ウィンブルドンの決勝を戦ったヒューエットの前に、最強とうたわれた男が屈した。「今日の自分には、相手が良すぎた」。相手をたたえ、完敗を認めた。

第1セット4-2リードから追いつかれた。しかし、また5-4とリードし、自分のサーブ。そこでも奪えず、最後はタイブレークで失った。第2セットの第1ゲーム。自分のサーブで40-0とリードしながらゲームを落とすと、反撃する力は残っていなかった。

課題はサーブだった。車いすテニスは、サーブをたたき込むことが難しい。また、下半身は車いすで固定されているため、上半身と腕の力や反動だけで打たなくてはならない。

世界1位と2位の両者でさえ、課題はサーブで、国枝には9本、ヒューエットには8本のダブルフォールトが出た。そのダブルフォールトが大事な場面で出たのが、この日の国枝だった。

第1セット4-3リードで、次の自分のサービスゲームを、ダブルフォールトがからんで失い追いつかれた。タイブレークの2-4でリードを許す場面でも、ダブルフォールトが出て、相手に突き放されるきっかけを与えた。

それでも、この敗戦が、国枝の再出発に火を付けたかもしれない。「東京パラリンピック以来、この悔しさを忘れていた」。車いすテニスの発展のためにも、1人だけが勝ち続けることは良くない。「(この悔しさが)次のステップに踏み出すエネルギーになる」。最大のライバルへの敗戦は、国枝を、また大きく成長させる原動力でもある。

◆全米オープンテニスは、8月29日から9月12日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドでも全コートでライブ配信される。