高校ラグビーで全国的にも珍しい女性監督が初陣を飾った。

全国高校選手権(12月27日開幕、東大阪市・近鉄花園ラグビー場)に向けた大阪第1地区予選の準々決勝が30日、同志社香里高校グラウンドで行われ、シード校の常翔学園が日新に138-0と大勝した。

指揮を執ったのが、緊急就任した前副部長の平池三記監督(53)。同校ラグビー部の部員による盗撮の不祥事が発覚。部員3人は8月に自主退学し、野上友一前監督(64)が引責辞任した。その後を受けたのが平池監督。監督として初めの試合に「ホッとしました。緊張感はめちゃくちゃありました。選手はノーペナ(反則なし)で最後までよく頑張ったと思います」と話した。

学校からの要請で「ためらいはありましたけど、やるしかなかった」。ラグビー部の専任教師が野上前監督と2人しかおらず、引き受けるしかなかった。技術面はコーチ、OBにゆだね、「私は頑張れ、頑張れだけです」と笑う。

99年に前身の大工大高に赴任し、01年から副部長となった。当初、ラグビーの知識は「ゼロです」。パスは後ろに投げてつなぐことも知らなかったという。部活動は「教員として行き詰まっていた時期でもあり、人との関わりを学ぶ上でやりたかった」。これまで副部長として、事務処理全般など下支えとしてなくてはならない存在となった。

不祥事後、動揺が走った部を必死にまとめた。「甘かった部分があったかもしれない。2度とこんなことはないように、道徳的な部分も含め細かく話をしています。メンタルケアはみんなで声を掛け合う。部員らだけでなく、家族にもそう話しています」。

あくまで“緊急登板”として、後任が決まり次第譲る意向だ。監督として最初で最後になるかもしれない花園へあと2勝。「教員として子どもたちの成長を見守っていきたい」と母のような目線を選手たちへ送った。【実藤健一】

◆平池三記(ひらいけ・みき)1969年(昭44)9月19日、香川県生まれ。スポーツ歴は「ありません」。大教大を卒業後、「教師の前に人生経験を積みたかった」と企業に就職し、営業職を務める。その後、公立高校で教師となり、大工大高(常翔学園)へ。数学の教員として勤める。