14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇王者で、今年7月にプロ転向した羽生結弦さん(27)が初のアイスショーで「ビールマンスピン」を3度、披露した。

まずは2曲目の「CHANGE」。ジュニア時代のエキシビション曲を黒と赤の情熱的な衣装で舞い、リズムがアップテンポへ転調した後に1回目を繰り出した。

氷上でタップダンスのような激しいステップを披露し、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳んだ後、幼いころから得意としてきたビールマンスピンを解禁。超満員7900人を魅了した。

背中を反らし、足を背後から頭上へと高く持ち上げて、鋭く回転する技。高い柔軟性が求められるため、幼少時ならまだしも、成人の男性スケーターではごく少数しか取り扱えないスピンだ。

クワッドアクセル(4回転半)を跳ぶため筋力を増やし、長丁場のショーに対応するための体力強化もしてきた中、柔軟性も両立させたところに、あらためて身体能力の高さを示した。

憧れたプルシェンコさん(ロシア)が使いこなしていたことで、羽生さんも幼少時から、まねしてきた。

2連覇を遂げた平昌五輪のエキシビションでも披露した。男子シングルでは06年トリノ金のプルシェンコさん以来となる大トリを任された羽生さんは、得意技だったビールマンスピンを久々に決めた。

18年のグランプリ(GP)シリーズ第5戦ロシア杯で優勝した時もエキシビションで回る予定だったが、右足首の大けがをして松葉づえを突かざるを得なくなったため断念していた。

そして今回のアイスショーで、再びファンの前で解禁した。

今回は2曲目の「CHANGE」に続き、ピックアップコーナーでの4曲目「スパルタカス」でも。恩師の都築章一郎コーチが会場で見守る前で、華麗に上体を反らした。

最後は5曲目の「ロミオ+ジュリエット」。“伝説のニース”の衣装に着替えて、再び足を頭上へと持ち上げた。

羽生さんは5日も横浜公演2日目を行い、12月2、3、5日には青森・フラット八戸公演が控える。新伝説の幕を開けた羽生さんの「プロローグ」。ファンが楽しむポイントは至る所にちりばめられている。【木下淳】