ショートプログラム(SP)3位の佐藤駿(18=明治大)がトリノに帰る。

フリー2位の180・62点を記録し、合計262・21点で総合2位に浮上。シリーズ2戦上位6人のGPファイナル(12月8日開幕、イタリア・トリノ)切符をつかみ取った。

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やっぱり“もって”いますよ、コイツは本当に-。

ともに歩んできた日下匡力コーチが、思わず漏らした。

3年前の19年12月。ジュニアGPファイナルはトリノで行われていた。

シニアトップへの登竜門。その大舞台で当時のジュニア世界歴代最高得点をたたき出し、佐藤は頂点に立った。高難度のルッツなど4回転2種3本を決め「とても光栄なこと。将来の夢はオリンピックで優勝すること」とほほえんだ。20年からシニアに上がり、北京五輪(オリンピック)も狙える立ち位置にいた。

だが、物事は思い通りに進まなかった。

北京五輪シーズンの昨季は左肩を痛め、22年2月に手術をした。4カ月間はジャンプが禁止され、当初は1年をかけて全快にもっていく見込みだった。それでもリハビリに励み、想定以上の早さで国際舞台に帰ってきた。

この日、冒頭に組み込んだ4回転ルッツは2・96点の加点を導き、1本のジャンプで14・46点を稼いだ。

「ルッツが入った時点で『今日はいけるな』という感触がありました」

続く4回転-3回転の連続トーループなど、7つのジャンプを全て降りきった。演技を終えて右拳を振り下ろすと、リンクサイドで日下コーチもガッツポーズをしていた。

上位3人の記者会見。佐藤は思いをかみしめた。

「ジュニアグランプリの時に1度滑って、思い入れの深いリンク。あそこに戻れる。いい演技ができるように、頑張っていこうと思っています」

何かに導かれるように、次の舞台はトリノに決まった。(エスポー=松本航)