全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。前回優勝のHonda、2年ぶりのV奪回を狙う富士通、戦力充実のトヨタ自動車、そして九州大会を初制覇した黒崎播磨が4強だが、大迫傑(31=Nike)が“参画”するGMOインターネットグループも、大迫の走り次第でそこに加わる。4強+1の戦力を中心にレース展開を展望してみたい(※正式区間エントリーは大会前々日の12月30日に決定)。

 

●4区(22.4キロ)

各チームのエースが登場する。

前回は黒崎播磨の細谷恭平(27)が区間新記録で区間賞。チームをこの区間で2位に押し上げたが、今回は2区のキプロノが強力なので、4区でトップに立つ展開が期待できる。

1位に浮上するチャンスは、細谷に勝てばどのチームにもある。19年、20年と連続区間賞を取った三菱重工・井上大仁(29)、Hondaの青木か伊藤、前回区間2位の安川電機・古賀淳紫(26)らも実績十分。トヨタ自動車は世界陸上オレゴンでマラソン13位の西山雄介(28)か。西山は20年大会3区区間賞選手でスピードもある。富士通は3000メートル障害リオ五輪代表で、箱根駅伝2区の日本人最高記録(当時)を出したこともある塩尻和也(26)か。

そして1番の注目は大迫が出場したときだ。近年はマラソン中心に出場してきたが、5000メートル日本記録保持者のスピードをどこまで出せるか。前にいるチームとのタイム差にもよるが、前半から速く入らずトータルでタイムを稼ぐことも考えられる。

向かい風となる残り3キロ強でタイムを落とさないことが、区間賞へのカギとなるだけに、日本を代表するランナーたちの最後の踏ん張りにも注目したい。

●5区(15.8キロ)

5区でトップに立つか、トップが見える位置にいることが優勝への必要条件になる。

トヨタ自動車は東京五輪マラソン代表だった服部勇馬(29)が、故障から回復して5区に入れば万全の布陣となる。12月の福岡国際マラソン日本人2位の大石港与(34)、中部大会5区区間新の宮脇千博(31)も候補だ。富士通も横手健(29)、塩澤稀夕(24)、浦野雄平(25)と適任者が多い。5区候補が多いトヨタ自動車と富士通が、選手層の厚さでいえば優勝に近い。

Hondaは東日本大会7区区間賞の小山直城(26)か川瀬か。GMOインターネットは吉田か今江。3年前まで4連勝した旭化成も、5区で何度も好走してきた村山謙太(29)や、前回区間賞の小野知大(23)に区間賞が期待できる。この区間でトップ争いに加わりたい。

選手層が分厚い上記チームに対し、黒崎播磨は土井大輔(26)、三菱重工は山下一貴(25)と候補が絞られる。2人とも前回は区間4位タイ。5区を想定した練習を繰り返したプラスが期待できる。

●6区(12.1キロ)

13年以降のすべての大会で、6区の区間賞を取ったチームが優勝している。そのうち途切れると思われていたが、前回の中山顕(25=Honda)で実に10大会連続となった。

チーム6、7番目の選手が起用される区間で、選手層の厚いチームが区間賞を取れる。だが最近は“勝負区間”と位置付け、強い選手を起用するケースも増えてきた。

富士通は2年前はマラソン日本記録を出す前の鈴木健吾(27)を起用し、鈴木は区間賞の走りで優勝にダメ押しをした。前回は塩尻を起用して勝負に出たが、前半で後れてしまった。今回は5~7区の切り札的な存在となる浦野を、6区に起用してくる可能性もある。

トヨタ自動車は15、16年の2連勝時に6区で連続区間賞の田中秀幸(32)が健在。以前は1500メートルのスピードが特徴だったが、今は1万メートルのスピード持久力が伸び、中部大会7区では区間2位に27秒差の区間新。7年ぶりの6区区間賞でチームの7年ぶり優勝に貢献するか。

Hondaは前回3位から1位に進出した中山が、故障から復調していれば1年前の再現が期待できる。小袖、川瀬らも候補だ。

●7区(15.5キロ)

富士通が絶好調の浦野を起用して勝負に出るか。浦野は2年前の優勝時もアンカーだった選手。故障で半年以上のブランクがあったが、12月に入って5000メートルの自己記録を更新した。リハビリと並行して走り方を改良したことが功を奏した。

トヨタ自動車は大石、宮脇、西山和弥(24)ら、27分台ランナーを起用してくる。場合によっては服部の可能性もある。Hondaは東日本大会7区区間賞の小山を、ニューイヤー駅伝でもアンカーに起用してくるかもしれない。いずれにしても今季の選手層の厚さが表れる区間だ。

近年は6区までにトップに立ったチームが優勝しているが、今回は例年以上に各チームの戦力が拮抗(きっこう)している。旭化成と三菱重工が7区でデッドヒートを演じた19年以来、4年ぶりのアンカー決戦が見られるかもしれない。