16年世界ジュニア女王の本田真凜(21=JAL)が8年連続8度目の出場で、初めてフリーに進めなかった。

3回転フリップの転倒などジャンプのミスが響いて51・81点。出場29選手のうち26位となり、上位24選手が進む24日のフリー進出ラインに届かなかった。差は0・64点だった。

SPでは「アサシンズ・タンゴ」を舞った。黒の衣装と深紅の髪飾り姿で、艶やかに。冒頭の3回転サルコー-2回転トーループは成功したが、続く3回転フリップで転倒した。最後のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)は降りたものの得点を伸ばせなかった。

演技後は「会場に入ってからフワフワしていて、思うように跳べなくて、すごく不安があった。ジャンプは悔しいですけど、でもルール変更後に重点的に練習してきたステップやスピン(3回中2回)で(最高評価の)レベル4を、久々に高いGOE(出来栄え点)も見ましたし、そこは良かったかな」と振り返った。

演技後はフリー進出の可否は分からなかったが、苦しいシーズンの中でも東京選手権8位、東日本選手権6位で本戦へ。「8年連続の全日本。自分でつかんだ舞台ですし、欲を持ちすぎないよう、もっと楽しみめるようにしたい。全日本に出ること、レベル4を取ること、今までのように小さな目標を1つ1つクリアできて良かった」と語っていた。朗報こそ届かずも、納得はできた。

近年は「自信をなくしていた」と話すことも多かった。この日も「昔の自分の位置というのを思い過ぎないようにすることも大切」と言った。その中で、約1年前に見た動画に救われたという。

「すごくつらいなって思っていた時にオススメに流れてきたもので。大きく言えば『人生は思い込みで良い方向にも悪い方向にも進む』という内容だったんですけど、それを見てから全てプラスにとらえられるようになった。友達から相談された時も共有しているほど、初めて心に響いたんです」

そう笑顔を見せ、楽しむことは忘れなかった。

11月の東日本選手権ではキレイに決めていた3回転フリップ。緊張も影響したのか、取り戻しつつあったジャンプのミスは悔やまれるが「長くやってきても理由はなかなか分からないんです。でも、思い切りやることだけは決めていた」と気落ちしなかった。

「全日本は、何回も6分間練習が終わってから『本当に嫌やな』って思うこともあったし、ここと同じ会場での18年の全日本も本当に苦しくて『ショートつらいな』って、このリンクに来て思い出したこともあったし、その時に比べれば楽しめている」

体調不良による棄権を除けば初めての「ショート落ち」だが、表情は暗くなかった。「良い方に思い込めているので、精神面はすごく充実しています。数年前の方が悩んでいたし、今日は自信を持てましたし、自分にしかできないことは滑りで表せたんじゃないかなって思います」と晴れやかに、ジュニア時代から慣れ親しんだ舞台を離れた。【木下淳】