加治木工(鹿児島)が劇的に、44大会ぶりの花園で白星を挙げた。0-0の後半24分、NO8近藤応介(2年)が自陣22メートルライン付近で相手パスをインターセプト。そのまま約80メートルを独走、先制&決勝トライを決めた。78年度の58回大会1回戦で清水南に21-12で勝って以来のブランク白星となった。

近藤応は走った。181センチ、75キロ。やや細身だが、しなやかなストライドで若狭東フィフティーンを引きちぎり、インゴールにダイブした。

「外にボールを回してきて、抜かれてたし、もう“あそこしかない”って」と、ドンピシャの読みでパスをカット。「僕は他校のNO8よりパワーで劣るし…。あそこはもう全力疾走しかない」と勝利のゴールを目指した。

12月1日、学校にすごいラグビー部OBがやってきた。人気プロレスラーの飯伏幸太(40)。「自分は行けなかった花園を決めてくれてありがとう」。元IWGP世界ヘビー級王者の激励に、近藤応はプロレス好き、しかも飯伏が自分と同じNO8だったこともあって、大興奮した。

その飯伏も知らない、実に44大会ぶりの花園だ。校長室前の棚に飾られた44大会前の出場記念トロフィーを、SO飯野啓心主将(3年)は「花園が決めて、初めて知りました」と笑う。同校OBではないが、就任1年目の塩向剛二郎監督(40)は「本当にいろいろな方々が応援をしてくれます」という。部員が15人に満たず存続の危機もあったが、鹿児島県姶良市の地元商店街が壮行会を開き、募金活動などでバックアップしてくれる。

薩摩藩の時代から約400年続く「加治木くも合戦」という行事がある。横棒の上で2匹を競わせる虫相撲だ。部の愛称は、それにちなんで「レッド・スパイダーズ」。飯野主将は「くもの糸のように粘っこく。ディフェンスが持ち味の自分たちには合ってます」とニッコリ。30日の2回戦も、Bシード東海大相模に食らいつくつもりだ。

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