久光の元日本代表アタッカー石井優希(ゆき、31)が、あふれる感情をこらえるように何度も何度も息を吐いた。

2-0で迎えた第3セット(S)。相手のミスによる25点目を見届けると、石井は歓喜の輪の中心に立った。久光一筋13年。現役ラストゲームは、今季のレギュラーラウンド(RR)を制した東レを相手に、ストレート勝ちで飾った。

今月3日に現役引退を発表。仲間とともに迎えた最後のプレーオフだった。

「この久光で引退できることが、もう何よりもうれしい。チームのみんなや最後まで足を運んでくれたファンがいること、私のバレー人生の誇りです」

最後は、涙はない。やりきった満面の笑みで、チームメート1人1人と抱き合った。

RR3位から連覇を目指したチームは、埼玉上尾、NECに連敗を喫し、先週時点でファイナル4敗退が決まっていた。それでも、チームは一体感を見せた。序盤から粘り強い守りで、相手エースのクランを封じた。25-15、25-19でセットカウントを奪取。一時は7点差をつけられた第3Sも、後半に7連続得点など高い集中力を発揮し、逆転に成功した。

石井は「引退はするけど私はいつまでもスプリングスファミリー」と胸を張った。「来季は新しいメンバーで優勝を目標に戦ってもらいたい。その場にいなくても常に一緒に戦っている」。ユニホームを脱いでも心は1つだ。

◆石井優希(いしい・ゆき)1991年(平3)5月8日、岡山県倉敷市生まれ。岡山・就実高から10年に久光製薬(現久光)に10年に加入。オールラウンダーとして活躍し、新鍋理沙、岩坂名奈、長岡望悠らとともにチームの黄金期を支えた。16年リオデジャネイロ五輪、21年東京五輪の代表に選出。昨季は3季ぶりのシーズン優勝に貢献。