東京五輪2冠の橋本大輝(21=順大)が合計171・497点で3年連続3度目の優勝を果たした。

08~17年に10年連続で頂点に立った内村航平以来、8人目の3連覇。萱和磨(セントラルスポーツ)が2位、杉本海誉斗(相好ク)が3位に入った。今大会は来夏のパリ五輪の予選を兼ねる世界選手権(9月、ベルギー)の代表2次選考会。橋本は既に内定している。

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決勝前日の練習だった。橋本は想像していた。最終の鉄棒の着地を決めて、ガッツポーズして、テレビにパフォーマンスする-。「一連の流れをイメトレして、ふざけて怒られ…、あ、怒られてはないか(笑い)」。この日、鉄棒で着地をぴたりと止めて見せたのは、1、2、3と指の数を増やして3連覇を示すしぐさ。「航平さんが15年の世界選手権で6連覇した時にやってて」。王座を継いだ者の自負がこもった。

万全ではなかった。1月に腰の疲労骨折が判明し、床運動と跳馬は2カ月間も回避。20日の練習日には右足首も痛めた。ただ、「今までの経験を踏まえ、イメージトレーニングをしてても、なんかいける気がするなって」。直感力は勝利を疑わない。

実際、予選2位通過も、勝利を確信したのは2種目目のあん馬後。落下の危険を乗り切り、「このままいけば、順調に優勝だろう」と確信があった。そして、その後の判断こそが、連覇を続ける鍵でもあった。

その時点で考えた。6種目目の鉄棒の構成を下げる。以前なら、自分に許さない選択。いまは違う。「まだまだ体操好きでやり続けたい。体の事など、先を見据えた試合をしないと。抵抗感はちょっとはあるんですけど」。指を増やして数える先、連覇の道を長く見据える。

「まだ、3ですからね。少ねえなって思いますけど。1つ1つ積み重ねていって、気づいたら6にいってたらいいかな」。3を掲げたのは全日本。世界選手権では昨年が初制覇だった。秋に指2本を掲げる2連覇へ。体だけでなく、気持ちも操る。【阿部健吾】