初優勝を狙った小川雄勢(26=パーク24)が、準々決勝で羽賀龍之介(32=旭化成)に完敗した。

16年リオデジャネイロ五輪(オリンピック)100キロ級の銀メダリストを相手に、全く自分の組み手にさせてもらえない。不十分な体勢から内股を仕掛けることしかできず、指導3の反則負け。反対に、自身は羽賀から指導を1つも奪えなかった。20年大会の日本一でもある試合巧者に、完全に試合をコントロールされた。

「大きなタイトルを取りたいという思いで今大会を迎えたんですけど、気持ちの部分で負けたのかな…」

準々決勝の後は、そう取材エリアでうなだれたが、序盤は「悪い感じはなかった」という。

確かに初戦の2回戦は、今大会最多12度の出場を誇る七戸龍(34=九州電力)が相手だったが、動きが見えていた。190センチ、136キロの自身と193センチ、117キロの七戸との迫力ある対決を、指導3を奪う反則勝ちで制していた。

ところが…。次の3回戦でアクシデントに見舞われた。まずは指導を1つ取って試合を優位に運んでいたが、近藤弘孝(愛知県警)から立ち関節を仕掛けられた。これは一発アウトで反則勝ちを収めたものの、左肘を痛めてしまった。

迎えた準々決勝に影響した可能性は高いが「気になるというか、ぎこちない程度なので問題なかった」と言い訳にせず、羽賀に喫した完敗を受け止めた。

アリーナ席では父直也氏(55)が見守っていたが、父子2代で日本一という夢は、またも来年以降へ持ち越した。95年バルセロナ五輪95キロ超級の銀メダリストで、この全日本は歴代2位の優勝7回を数える偉大な父。その背中を追い、いつか同じ頂点に立つべく、完敗を糧にする。【木下淳】