フィギュアスケートのアイスダンスで世界選手権日本勢最高タイ11位と躍進した村元哉中(30)高橋大輔(37)組(関大KFSC)が、プロ転向後の「かなだい」継続を表明した。

引退発表から一夜明けた2日、都内で記者会見。高橋は競技生活からの引退を2月の4大陸選手権後に決め、古傷のある右膝に「限界を感じた」と明かした。12日に福岡で開幕するアイスショー「アイスエクスプロージョン」が再出発の舞台。プロとなっても「かなだい」として、新たな領域や深みのある作品を追い求める。

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スーツ姿でそろえた村元と高橋を、45社97人の報道陣が囲んだ。それは競技会のようだった。着席する形でなく、2人が「いつも通りに」と望んだフランクな“囲み取材”。2度目の引退となる高橋は、国際連盟のルールで競技者に戻れない。一緒にプロ転向を決断した村元とともに、笑顔で未来を見据えた。

村元 これで終わりじゃないというか「これからやっとスタートするんだよ」という目で見てほしいなと思います。

高橋 これから新しい世界に行きますけれど、またビックリさせられることができればいいと思っています。“ジェットコースター”に、まだまだ乗っていただけたらいいと思います。

ひそかに2人は区切りを決めていた。2月の4大陸選手権後、高橋が村元に切り出した。シングル時代から付き合ってきた右膝は限界。氷に膝をつく動作で力は抜け「ごめん、今日は滑れない…」とリフトが思うようにできない日があった。高橋の意向を知り、30歳の村元も競技会に出る「アマチュア」引退を選んだ。

村元 「(自分の)膝をあげたい」ぐらいの気持ちでした。これ以上に最高なパートナーはいない。自分の中で(競技生活は)やりきった。「まだまだ大ちゃんと、いろいろな作品を作りたい」と思えました。

村元の誘いで20年にカップルを結成し、3シーズンをともに歩んだ。最大の目標だった22年北京五輪出場は逃したが、今季は全日本選手権初優勝、世界選手権で日本勢最高タイの11位。シングルに比べて国内の注目度が低かったアイスダンスの魅力、価値を飛躍的に高めた。昨秋のグランプリ(GP)シリーズNHK杯のころ、関係者に「つなぎをもうちょっと簡単にして、後半に得点を上げられるようにしてみたら?」と提案を受けた。高橋には「作品として妥協するのは良くないのでは?」と信念があり、世界中の人の胸に刻まれる演技を目指してきた。

プロ転向で競技ルールによる制限が解かれ、表現の幅はさらに広がることになる。高橋は芝居や歌にラテンダンス、村元は個人での演技にも興味を示した。「かなだい」としての進化はもちろん、スケート界の発展に向けた活動も続ける。

高橋 哉中ちゃんもそうですけれど、シングルとアイスダンスを両方経験している人は、そんなに多くない。ペア、カップルをやってくれる子が、増えてほしい気持ちは強くあります。

常識にとらわれない挑戦は続いていく。【松本航】