ショートプログラム(SP)3位の吉田陽菜(18=木下アカデミー)が、逆転でGP初優勝を飾った。

フリートップの139・32点を記録し、合計203・97点。シニア本格転向1季目の愛知・中京大中京高3年生が、シリーズ2戦上位6人のファイナル(12月、北京)進出へ前進した。SP2位の渡辺倫果(TOKIOインカラミ/法大)が合計203・22点の2位。日本女子のワンツーフィニッシュは21年NHK杯(1位坂本花織、2位河辺愛菜)以来、2年ぶりとなった。

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記念すべきGP初優勝を、吉田は更衣室で伝え聞いた。3位だったSPで6点差の最終滑走ヘンドリックスが演技を終え、取材エリアの渡辺が叫びながら走ってきた。「えっ…」。想像もしない結末に言葉を失った。フリートップの139・32点で合計203・97点。メダリスト会見で中央に座ると「優勝したことは、まだ全然実感できていないです」と素直に明かした。

今の手応えよりも、未来への希望を抱けた。こだわりのトリプルアクセル(3回転半)は着氷が乱れ、3・09点の減点。そこから5つのジャンプを降りたが、最終盤の3連続の最後が1回転になった。スピン3つとステップは最高のレベル4。「鶴」がテーマの新フリーで「お客さんのいる一番上まで羽ばたこうと思って、胸を張って滑れました」と喜んだ。一方で200点超えにも「1つの目標ライン。もっと点数を伸ばせる」と満足はしなかった。

世界女王の安藤美姫さんを生んだ愛知の名東FSCで、小さなころから注目を集めてきた。ジュニアの下のカテゴリーである全日本ノービス選手権を2連覇。12歳で3回転半を成功させたが、以降は腰を痛めて競技会の欠場が続いた。20年春に京都・宇治市の木下アカデミーに拠点を変更。年下の島田麻央らと切磋琢磨(せっさたくま)し、今季から国際大会での本格的なシニアデビューを飾った。

2年前の春、北京五輪シーズンを前にシニア転向が可能な15歳に達した。それでも「ジュニアGPに出たことがないので、経験してからシニアに上がりたい」と五輪への“最短ルート”ではなく、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会を見据えて歩んできた。

「まだファイナルを目指せる(立ち)位置ではない。来年や、五輪シーズンに向けて、もっと上で戦えるようにしていきたいです」

記者会見は英語で答えた18歳。世界へ新たな風を吹き込む、第1歩となった。