池江璃花子(23=横浜ゴム)が、2大会ぶりの五輪個人種目出場を決めた。57秒30で派遣標準記録(57秒34)を突破しての2位。レース後は喜びをかみしめてガッツポーズ。「本当に言葉にならないくらいうれしいです」。3位松本信歩との差は、0秒01。「最後の最後は自分を信じて」とうなずいた。

16年リオデジャネイロ、21年東京に続き、3度目の五輪となるパリ。前日17日に「きつい4年間でもあった。本当にやることはやってきたので、あとは全力で挑んで、勝ちをとって、派遣も切って、笑顔で明日の夜を迎えられたらと思います」と口にした通りに大舞台への切符を手に入れた。

自信は、コーチ宛に送信したメッセージの文面ににじんだ。

「今、とても静かな興奮を覚えています」

大会開幕2日前の15日に拠点のオーストラリアからジャネル・パリスター・アシスタントコーチが来日。「その言葉で自信が戻ってきたと思った。恐怖がナーバス(神経質なさま)に変わった。そのナーバスも心地よいナーバスですね」とうなずいた。昨秋に日本から拠点を移した池江をオーストラリアで出迎えた当初は「不安、恐怖で追い詰められているように感じた」と振り返る。

他国のトップ選手とともに高めあう環境で、池江はその背中を追った。「追い付こうとする思いがあるだけで、強くなれる気がした」。19年2月に発覚した白血病との闘病を経て、新天地でのウエートトレーニング、何よりも泳ぎ込みで体格が変わった。「(理想体重までは)あと2~3キロ。やっぱりみんなに『体が大きくなったね』と言われるのはうれしい」。五輪切符を懸けた約1年ぶりの国内大会でも「早く泳ぎたい」「何秒出るんだろう」と前向きな感情があふれ出た。

大会はまだ序盤。50メートル、100メートルの自由形にもエントリーしており、五輪での個人種目をさらに増やす可能性も広がる。夏に向けた挑戦は続く。【松本航】