【モントリオール=阿部健吾】3連覇がかかる宇野昌磨(26=トヨタ自動車)が今季SP世界最高で首位発進した。

4回転フリップ、4回転-3回転の連続トーループ、トリプルアクセル(3回転半)を成功させて107・72点。2位に106・35点で鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)、3位に105・97点でイリア・マリニン(米国)がつけた。

宇野が首位に立った感情を素直に発した。

「正直、あんまり…。気分はいいですけれど、いい点数をもらって(笑い)。でも1点でも2点でもそんなに変わらないので、フリーの、男子なんか特に。10点でも変わらない、まであるので。とりあえず今日と明日だけ(喜ん)で、明後日からはもう1回、何もなかったのかのように切り替えて、とは思っています」

冒頭の4回転フリップは「今までの試合で一番いいフリップを跳ぶことができました」と振り返る出来。完成度の高い演技でまとめきり「目いっぱい演技していたので、素晴らしいショートだったのかなと思います」と総括した。

18日の公式練習で「やれることを毎日限界までやってきた。練習に後悔は全くない。いい結果を望みながらできたら」と話していた。この日の午前に練習リンクで行われた公式練習では、「気になる」と話していた4回転フリップなどを確認する姿があった。

過去2回の世界選手権と違い、優勝の困難さを自覚していた。昨年末に全日本選手権を制した後には、こう見通した。

「この競技人生やってきた中で、最高の演技をしなければ勝てないっていうのは分かっている。まずは最高の調整をして、この3カ月をちゃんと利用して。無難な演技をしても2位、3位にしかならないので、優勝をちゃんと狙える、マリニン君と戦える練習をしたいなと思っています」

名前を挙げたのはクワッドアクセル(4回転半)を操る「4回転の神」マリニン。しっかりと勝負を意識して、この舞台に立っていた。

演技後はガッツポーズで喜びを表現。中1日で23日(日本時間24日)のフリーを迎える。

「この2人と比べると年齢を重ねているので、明日はしっかり休みたいと思っています」

上位3人の記者会見で年下の2人に目をやり、穏やかにほほえんだ。最大限の準備を施し、今季最後の演技に向かう。

◆世界選手権男子の連覇 カール・シェイファーの7連覇(1930~36年)が最長。5連覇はウルリッヒ・サルコー(1901~05年、1907~11年)、ディック・バトン(1948~52年)、4連覇はウィリー・ベッケル(1925~28年)、ヘイス・アラン・ジェンキンス(1953~56年)、スコット・ハミルトン(1981~84年)がいる。3連覇は直近ではパトリック・チャン(2011~13年)、ネイサン・チェン(2018~21年)がおり、歴代で7人。宇野が達成すれば日本勢初で8人目、3連覇以上では14人目となる。