富士通がデンソーを下し、16年ぶり2度目の頂点に立った。1勝1敗のタイで迎えた大一番に先発、ベンチメンバー一丸となって臨み、最後まで主導権を渡さなかった。司令塔としてチームをけん引してきた日本代表候補のPG町田瑠唯(31)は、3度の準優勝を経ての初のリーグ制覇。歓喜の涙で、夏のパリオリンピック(五輪)に向けて弾みをつけた。初優勝を狙ったデンソーは、昨年12月の皇后杯全日本選手権との2冠はならなかった。

   ◇   ◇   ◇   

歓喜の涙顔で、町田はBTテーブス監督と長いハグを交わした。優勝インタビューでは「最高です」と口にした後、感極まって言葉に詰まった。あふれる涙をタオルで拭い、「入団してからずっと応援してくれたファンの方々、そして家族へやっと恩返しできたかな」と実感を込めた。

持ち味のスピードと視野の広いプレーで8得点、9アシスト、6リバウンドをマーク。司令塔としてチームに活力をもたらした。王手をかけて臨んだ前日14日は逆転負け。この日も追い上げられる展開となったが、一丸でリードを守り切り、自身のプレーよりも「みんなが素晴らしかった」と誇った。

13年前の入団時、チームの初優勝シーンが収録されたDVDを贈られた。これまでその映像を「ひたすら見てきた」と明かす。今季は日本代表主将の林咲やナイジェリア出身のテミトペが加わり、ENEOSから移籍3年目で主将の宮沢も躍動。そんな充実した戦力を生かし切り、ついに頂点に立った。繰り返し再生してきた歓喜の瞬間が、自分たちが主役となったコートに広がった。「その光景をずっと夢見てきた。本当に優勝したんだな、という気持ちになった」とかみしめた。

21年東京五輪では五輪新記録の1試合18アシストをマークするなど、銀メダル獲得に貢献。海外挑戦や故障などの影響でしばらく日の丸からは遠ざかったが、パリ五輪では日本の司令塔として期待される。日本一のタイトルを手に、パリで世界一に挑む。【奥岡幹浩】

富士通・宮沢主将(チームトップの18得点でけん引し大会MVP)「ENEOSから移籍してきて、富士通で優勝したいと思っていた。今日は気持ちが出せた」

富士通・BTテーブス監督 出だしも終わり方も素晴らしい。40分間、富士通のバスケットができた。今日は完璧。ベンチメンバーがステップアップしてくれて、チームで勝った。

<表彰選手>

◆大会MVP 宮沢夕貴(富士通、5年ぶり2回目)

◆ベスト5 ジョシュア・テミトペ、町田瑠唯、宮沢夕貴(以上富士通)、馬瓜エブリン、赤穂ひまわり(以上デンソー)

■デンソー 2冠ならず悔し涙

初Vを逃し、皇后杯との2冠には届かなかった。序盤からリードを許し、後半開始直後に3点差に迫るなど粘りをみせたが及ばず。34歳の主軸高田はフリースロー全10本成功を含む20得点をマークしたが勝利につなげられず「このチームで勝ちたかった。悔しい」と唇をかんだ。両チームトップ23得点の馬瓜は「勝たせられなかったのがつらい。めちゃくちゃ悔しい」と悔し涙で絞り出した。