レスリングのアジア選手権で15日、パリ五輪(オリンピック)男子グレコローマンスタイル77キロ級代表の日下尚(三恵海運)が決勝で地元キルギスの世界王者アクジョル・マフムドフを4-2で撃破した。

大きなはずみをつけ「レスリング人生の中でも大きい勝利。これから、どんどん強くなれる」と手応え十分。23歳の成長株は金メダルに照準を合わせる。

東京五輪銀メダルのマフムドフには昨年の世界選手権で敗戦。足が止まった反省から今回は前に出た。第1ピリオドを3-0とリードし、第2ピリオドに投げ技を食らったが、体をずらして顔から落ちて1失点にとどめた。圧力をかけ続けて相手を消耗させ、文句なしの勝利。敵地の大歓声を黙らせ「ヒール(悪役)としてこの地に名前を刻めた。気持ち良かった」と喜びをかみしめた。

相撲で強靱(きょうじん)な下半身の土台を築き、中学時代は全国大会に出場した。五輪切符をつかむと、大相撲の佐渡ケ嶽部屋などへ出稽古し、大関琴ノ若に胸を借りて、大きな体を押し上げる技術を模索。体を上下に揺らして前進する「がぶり寄り」を得意とした秀ノ山親方(元大関琴奨菊)からは腰を割った出足を学んだ。

愚直に前に出る姿勢で、初の五輪へ突き進む。「信念を貫けば、世界でも勝てるというのを証明していきたい」との言葉も力強かった。