パリ五輪は17日で開幕まで100日。大会組織委員会は新時代を象徴する「市民参加型」の祭典を目指し、さまざまな斬新なアイデアを打ち出したが、地元パリ市民のムードは停滞している。夏季五輪史上初めて競技場外のセーヌ川で行う開会式は、テロへの懸念から観客数が当初の60万人から約30万人に縮小され、先行きも不透明。「平和の祭典」を掲げる五輪は負の側面が顕在化し、熱気が高まってこない。

▽冷めた市民

「パリ市民にとって理想的でない大会だ」。3月下旬、金融業界に勤めるコロンタン・ベネクさん(23)は苦笑いを浮かべた。ガザ情勢などを受けてテロへの心配は増しており「(組織委が)約束した通りの素晴らしい五輪になるかは分からない」と表情を曇らせた。

1世紀ぶりのパリ大会を「新時代の五輪」と位置付ける国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、世界屈指の観光名所を中心に開かれる華やかな祭典に期待を込める。しかし、公共交通機関は例年以上の混雑が予想され、五輪期間中はオンラインで仕事をするというジェナ・ファラさん(20)は「人の数の多さが心配」と不安げだ。市内に住む女性(33)は五輪開催により税金が上がる可能性を危惧し「われわれには良いことがない」とこぼした。大会のチケットも「高過ぎる」との声が相次ぎ、市民の反応は冷めている。

▽開会式代替案も

組織委は「広く開かれた大会に」をスローガンに掲げる。コンコルド広場にはブレイキンなど都市型スポーツを集め、マラソンは本番と同日に市民が同じコースを走る新たな試みを計画する。選手や観客らの垣根を越えた「開放感」を売りにし、若者離れが深刻な五輪の新たな姿を見せるもくろみだった。

しかし、目玉の開会式の観客は当初より半減。15日にはマクロン大統領がテロの危険性が高まった場合は代替案としてフランス競技場を使用する可能性にも言及した。次々と計画の変更が浮上し、市民の五輪への目線は厳しい。ベテランのフランスメディア記者は「大会のネガティブさが前面に出ている。当初、期待した五輪への落胆がある」と指摘した。

3月に公表されたフランス国内の世論調査では「パリ五輪が楽しみか」との設問に対し「とても待ち切れない」「少し待ち切れない」の回答が合計37%にとどまった。五輪の「支持派」が半数を割る事態にも、組織委のエスタンゲ会長は「驚くべきことではない。ビッグイベントの前になると、常にたくさんの疑問や心配事が増えてくるものだ」と懸念を打ち消した。さまざまな課題を抱えたまま、大会準備は「最終段階」(同会長)に入った。(パリ共同)